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[東京小考] 日中韓、「三兄弟」の秘密

Posted November. 12, 2015 09:24,   

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ソウルに日中韓の三国協力事務局(TCS)があるのを、韓国の皆さんはあまり知らないのではないか。まして日本や中国ではほとんど知られていないが、これは日中韓の三か国が資金と人を出し合って作る公的な協力機関だ。事務局長と2人の次長は2年の任期で3カ国から順番に選ばれる。9月に着任した三代目の局長は中国人だ。

もともと日中韓の関係は複雑で、三カ国首脳が一堂に会すことはなかったが、韓中の国交が開けてから状況は変化。1990年代後半からASEAN(東南アジア諸国連合)の場を借りて日中韓の首脳会議が行われるようになり、2008年からは三国の持ち回り開催に発展した。この地域のめざましい経済発展と、協力の必要性が背景にあった。

TCSはそんな中で11年に生まれたのだが、皮肉なことに翌年5月を最後に首脳会議が遠のいてしまった。従軍慰安婦問題や李明博大統領の独島行き、尖閣諸島をめぐる日中対立の先鋭化、そして安倍晋三首相の靖国神社参拝などが障害になったのだ。

その首脳会議が今月初め、3年半ぶりにソウルで開かれた。来年からの開催も合意されたが、大事なことは今度こそこれを定着させることだ。それには、この間の苦い教訓を生かすだけでなく、まずは「日中韓」という枠組みの意味を確認することが肝心ではないか。

では、日中韓のアイデンティティーとは一体何なのか。昨年6月、私はこのコラムで「三兄弟の長い葛藤物語」という寓話を書いた。互いに複雑な歴史があり、愛憎が入り組む日中韓の話だが、この「近さ」こそが決定的ではないか。

それを端的に示す事実がある。発音こそ少しずつ違うが、この三国が互いを韓国、中国、日本と、正しく呼び合っていることだ。当たり前に思うかもしれないが、世界の国々はコリア、チャイナ、ジャパンなどと、別の名で呼ぶではないか。先月、釜山で開かれた日中韓シンポジウム(東西大学など主催)の夕食会で私がこの話をすると、一同、そう言えばそうだと面白がってくれた。名前を正しく呼び合う関係は、やはり「三兄弟」と言うにふさわしい。

 ところで、首脳会議がしばらく中断された間もTCSは大規模な国際シンポジウムのほか、さまざまな催しを企画企画してきた。例えば日中韓の大学生の混成チームが競うビデオ作品のコンテスト。あるいは、さまざまな文化をテーマにする小規模の定期セミナー。そこでは日本の漫画をもとに日中韓と台湾で作られたテレビドラマ「花より男子」も取り上げるなど、多彩に文化比較が論じられている。

 実は、私たちの日本国際交流センター(JCIE)は1年前からTCSとも提携して、「日中韓の絆」を再発見するユニークな連続セミナーを東京で開いている。そこでは日韓友好の2百年を物語る江戸時代の「朝鮮通信使」も取り上げたが、漢詩を交換し、筆談で儒学を語り合う日韓交流には、言うまでもなく中国文化の存在が欠かせなかった。簡単な筆談なら今でも三国間で可能である。

 北京大学から日本アニメの同好会メンバーを招いた時は、会員が8百人もいてコスプレも楽しんでいると聞いて驚いた。韓流ドラマやKポップの人気は日中両国で根強い。

 朴槿恵大統領は日中首脳をもてなす晩餐会で「雨降って地固まる」という三カ国に共通の格言を挙げた。その流儀で言えば、日中韓は「以心伝心」と行きたいが、「同床異夢」のことも多い。互いの共感を育てる一方、違いも理解することが大切だ。

この14日にはTCSとJCIEが共催して、ソウルで日中韓の学生対話「ユースダイアローグ」(東アジア財団後援)を開く。テーマは教育や就職、結婚、仕事と育児の両立など、身近な話題ばかり。日本から参加する学生グループは前日、ソウル大学も訪ね、ここでは「家族」を論じ合う。

 兄弟だからこそ喧嘩もする。下手をすれば骨肉の争いにもなるが、協力し合えばこれほど強い関係もない。そんなことを感じ合う機会になればよいのだが。

(若宮啓文 日本国際交流センター・シニアフェロー、前朝日新聞主筆)