Go to contents

「仁義ブーム」の火付け役の俳優、キム・ボソンの「義理学」

「仁義ブーム」の火付け役の俳優、キム・ボソンの「義理学」

Posted May. 27, 2014 09:11,   

한국어

「ウィリ!」(義理)

最近、大衆文化界を浮き立たせる流行語だ。

その由来はこうだ。俳優のキム・ボソン(48)が昨年3月に主演した映画「英雄:サラマンダーの秘密」の試写会で跪き、「ヒットしようがしまいが、一生の義理を持っておもてなしいたす」と口にし、女性のお笑い芸人のイ・グッジュがコメディー番組で、「ボソンの妻」の役を演じて、「義理、義理」と叫んだ。その後、ネット上では、「義理シリーズ」が広まった。今月初め、キム・ボソンがビラックシッケのコマーシャルで、「わが体への義理」と叫びながら、「ハンア義理(壺)」、「シントブ義理(地山地所)」を叫ぶと、義理は時の流行語となった。

6.4統一地方選挙も、「義理の土俵」だ。ソウル市の朴元淳(バク・ウォンスン)市長は、公約集で、キム・ボソンの似顔絵と共に、「約束を守る義理」と書いた。ほかの地方選挙の候補らも、「地元との義理」の約束を打ち出している。

23日、キム・ボソンに会った時、道行く幼稚園児らが彼を目にし、「義理、義理」と叫んだ。

——園児まで義理を口にしている。

「『時の人、キム・ボソン』よりは、義理が時のことになればいい。人気を享受するときではなく、謙虚に義理の真剣さについて啓蒙する時だ」

——ビラックシッケのコマーシャルは、最初から笑わせるために撮ったものなのか。

「いや、とんでもない。高速撮影手法(スローモーション)で撮影したので、『わあ、これ素敵じゃん』と思って、真剣に拳を振り回し、男らしくシッケをがぶ飲みした。ところが、コマーシャルを見たら、ブラックコメディーだった。自分を笑いものにし、こけにしても、義理が浮き彫りになれば嬉しい限りだ」

——あなたの顔と義理を借用しているところが多いが。

「(朴元淳の)公約集に出てくるとは知らず、認めたこともない。広告は、ヒットする前に撮影したので、大金を手にしたわけでもない。次々と広告の提案が寄せられているが、義理の商業化は警戒すべきだと思っており、大の男の気概を盛り込んだ広告だけを撮りたいと思う。義理に迷惑をかけるわけにはいかないから」。

——なぜ、ウィリ(義理=仁義)がブームとなっているのか

「時代が義理を呼び出したような気がする。弱肉強食、物質万能主義時代に傷つき、疲れきっていたところ、義理を叫びながら少しは慰められているのではないか」

——義理は結局、「仲間同士の庇いあい」という批判もあるが。

「義理の第1段階は友人との義理、第2段階は公益との義理、第3段階は分かち合いの義理だ。私が叫ぶ義理とは、公益との分かち合いだ。ああ!義理の時代が来ると思ったら、胸が一杯になって涙が出てくる」

キム・ボソンは先月22日、旅客船セウォル事故犠牲者の遺族らに使ってほしいといい、銀行から融資を受けた1000万ウォンを寄付した。「義理の男だが借金が多く、その程度しか能力がないのが残念でならない」と話した。

——本当に借金したのか

「私も2人の息子の父親だが、あの方々のことを思えば、体が痛く、胸苦しくて気が遠くなりそうだ。ダイバーの資格の無いことが悲しく、映画のように船に穴を開けてでも入りたいと思ったが、それすらできない。だから少額とはいえ、金を工面した」

——家族らは同意したか。

「結婚前に、妻に義理があるかと聞いた。そのためか、妻も人を助けることに、意を共にしている。人生成功の基準は、物質や名誉ではない。周りから外国製車に買い換えるよう言われても、国産自動車を6年間乗り回している。携帯電話も古くなったフィーチャーフォンを使っており、番号も依然、011で始まる」

——俳優も義理のためやっているのか。

「金洪信(キム・ホンシン)作家の『人間市場』を感銘深く読んだ。正義と義理のために命をかける主人公のチャン・チョンチャンに魅了された。私がサングラスを掛けている理由は、高校の時、友人らを苛めていた『野生馬』という組織と立ち向かい怪我をして、左目がかすかにしか見えないからだ。高校卒業後も、3人の男から苛められていた男女を助けたことがあるが、警察署に行ったら、双方暴力沙汰になっていた。映画の中で、正義と義理を実現したいと思って、役者になった」

——デビュー作「幸せは成績順じゃないでしょう」(1989年)の時は、「ジェームズ・ディーン」と呼ばれるほどの二枚目で、「トゥーコップス2」(1996年)では頑丈な筋肉質を誇ったが、今は、体がそうとう重い気がする。

「なぜ、韓国では酒と義理とを結びつけるのかわからない。これからは体を鍛えて、本業のアクション俳優として活躍すべきだろう」

インタビューの途中、キム・ボソンはかかってきた電話に慌てて出て、「義理でがんばれ、早めに確認してほしい」といって電話を切った。知り合いの人から急だといわれ、200万ウォンを振り込んだという。「関羽の義理論」を好んで読んだという彼だが、義理の道程は険しく見えた。