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無限エネルギー反物質、1グラム100京ウォン

無限エネルギー反物質、1グラム100京ウォン

Posted November. 30, 2013 06:10,   

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この宇宙に地球と同じ惑星があって、人間とそっくりのエイリアンがいる。人間がエイリアンと会って握手をした瞬間、核爆弾の数百倍を超える途方もない爆発と光が発生する。エイリアンの体が、人間の体を構成する物質と電磁気エネルギーが正反対の反物質(antimatter)で構成されていたからだ。

反物質についていくらか勉強した人なら、このような想像力を働かせることは容易い。物質を構成する原子の陽子がプラスの電荷、電子がマイナスの電荷を帯びるなら、反物質は陽子(反陽子)がマイナスの電荷、電子(陽電子)がプラスの電荷を帯びる。そのため両者が出会うと互いを完全に消滅させ、途方もないエネルギーが発生する。普通、人間が食物を摂取・排泄して得たエネルギーの量は食物の質量の10億分の1にすぎない。質量の10億分の1だけエネルギーになるという話だ。核反応をすれば、その割合は100分の1に増える。反物質を利用すれば、質量の100%がエネルギーに転換可能だ。反物質0.5グラムで広島に落ちた原子爆弾の威力が可能だ。

それほど途方もないエネルギー源なので、反物質はSF小説家や軍需産業界を魅了する。ダン・ブラウンの小説「天使と悪魔」でも、ガリレオ以来ローマカトリック教会の弾圧を受けたある科学者集団がバチカンを脅かす時に使う武器が反物質爆弾だ。SFシリーズの古典である「スタートレック」の宇宙船エンタープライズ号の動力も、物質と反物質の融合によって得られる。

英オックスフォード大学物理学科の教授である著者は、ナンセンスだと一蹴する。反物質は138億年前、宇宙が誕生する時にできたが、ほとんどが物質とぶつかって消滅した。これは、「カイン(物質)とアベル(反物質)は兄弟/彼らの両親は最初の両親(ビッグバン)/そして1人の子どもが別の子どもを殺した」という機知の富んだ詩で表現できる。

むろん、反物質が完全消滅したわけではない。宇宙背景放射にその残滓が残っている。太陽でも反物質ができる。太陽の中心部で陽電子が作られ、電子と衝突して爆発し、ガンマ線が放出される。このガンマ線が10万年かけて太陽の表面に到達し、X線になって再び紫外線になり、地球の表面に到達する時に虹色になる。

地球上でも反物質を作ることはできる。しかし、反物質を人工で作り出すのに必要なエネルギーの費用は反物質の消滅で出るエネルギーの価値よりも大きい。著者の調査によると、現在、ダイヤモンドは1グラム6200万ウォンだが、反物質は1グラム7京ウォンだという。しかし、現在の技術では数百億ウォンをかけて、1年でやっと1ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)しかできない。このため、反物質1グラムを入手するには、数億年かけて100京ウォンの費用を投じなければならない。

本を読むことで、難解な量子力学の世界にも自然に入門できる。量子力学に適用されるシュレディンガー方程式とアインシュタインの相対性理論の公式(E=mc²)を1つに統合した数学者のポール・ディラック(1902〜1984)によって反物質の理論的存在の可能性が立証されたというドラマティックな説明も興味深い。