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[オピニオン]歴史を作る日記

Posted November. 04, 2013 03:26,   

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「絶対に弱くなったり、さびしい姿を見せず、何時も堂々と自信満々であること」。1983年、イタリアへの留学の途についた21歳の鉠秀美(チョ・スミ)は、日記の最初には何時もこのように書き込んだ。世界的声楽家になった今まで、鉠氏は30年間、1日も欠かさず、日記をつけてきた。あれほど自信溢れる舞台の裏には、嬉しい日であれ、悲しい日であれ、日記を媒介に地道に自分との会話を続けてきたもう1人の鉠秀美がいたのだ。

◆世界的文人らが残した本の多くは、日記がその基となっている。1780年、朴趾源(バク・ジウォン)が、清国に使者に行き、目にし耳にしたことを書きとめた「熱河日記 」は、紀行文の白眉であり、朝鮮後記の思想や文学を代表する傑作だ。ドイツの文豪・ゲーテが、1786年から2年間、イタリアを旅行して書いた日記は、「イタリア紀行」の母体となり、米国の自然主義思想家・ヘンリー・デイビッド・ソローが、自然の中で自給自足しながら書いた日記は、代表作「ウォールデン」を生んだ。

◆1人の孤独な記録は、後日歴史になったりもする。ユネスコの世界記録遺産に登録された李舜臣(イ・スンシン)の「乱中日記」がその代表だ。ユダヤ人少女・アンネ・フランクの日記は、公式文献ではなかなか目にできない民衆の微視史ということで、その価値が高い。朝鮮時代、領南の士林だった金坽(キム・リョン=1577〜1641)は、死ぬ時まで39年間、欠かさず日記をつけた。最近、韓国国学振興院が、彼の日記「溪巖日錄」を、韓国語で初めて翻訳し、6冊の本として発行した。朴趾源や李舜臣ほど有名人物ではないが、彼の日記には、祖反正や丁卯胡亂 、丙子胡亂など、重要な出来事や政治的渦、士人の日常の出来事、苦痛を強いられている民の生活が生々しく記されており、史料的価値が高い。

◆最近は、小学生を除き、日記をつける人はなかなか目にできない。本を読む人も減っている世の中、読むことにより一段を力を入れなければならない日記を期待するのは、無理だろうか。紙でできた日記帳でなくても、パソコンであれ、スマートフォンであれ、毎日の短編的な考えを記録できるだろう。ひょっとして、その日記が積もりに積もって、数百年後は貴重な歴史的資料になるかも。

シン・ソンミ文化部記者 savoring@donga.com