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アベノミクスより恐ろしい「教科書国定化」 日本出版界の父が警告

アベノミクスより恐ろしい「教科書国定化」 日本出版界の父が警告

Posted August. 09, 2013 03:37,   

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「子どもと教科書全国ネッ21」の俵義文事務局長(72)は、1965年から教科書歪曲阻止運動に乗り出した。当時、家永三郎(1913〜2002)東京教育大学教授が「検閲のような教科書検定は違憲だ」として国家を相手に起こした訴訟を支援したことがきっかけだった。中央大学法学部を卒業し、教科書出版社入社1年目だった。俵氏は49年間、歪曲教科書が足を踏み入れないよう活動してきた日本教科書出版界の父のような存在だ。

俵氏は1998年に「子どもと教科書全国ネッ21」を立ち上げた。正しい教科書を通じて日本の子どもたちが戦争の責任を十分に認識できるよう努めた家永教授の意志をついだのだ。家永教授は2001年にノーベル平和賞候補にあがったことがある。

2001年に保守団体が歪曲教科書採択の割合を高めるために行なった運動を俵氏は阻止した。全国に散在していた父兄会議を体系化し、高齢にもかかわらず150回を超える講演と人間ベルト集会を行なった結果だった。教科書歪曲阻止のための新聞広告費の募金運動に市民が賛同し、予想よりも多くの募金が集まった。当時、朝日新聞など日本の新聞のほかに東亜(トンア)日報にも広告を掲載した。東亜日報の広告を見た韓国人が電話をかけてきて、「日本政府と国民は全く同じ考えだと思っていたが、そうでない人も多いことを知ってうれしい」と俵氏を応援した。良心をもって日本のために行なった運動が大韓海峡を越えて通じたのだ。

6月27日、東京千代田区の事務所で会った俵氏は、積み上げられた書類越しに、「安倍晋三首相のせいで忙しくなった」と冗談を言った。しかし、「アベノミクスに関心が集まり、人々がほかの問題よりも恐ろしい安倍首相の『教科書国定化』の動きをあまり見ていない」と指摘した。そして、「安倍政権が教育委員会委員長の選任、教科書学習指導要領の詳細化、検定基準の具体化、教師統制などで政府の思い通りに全ての教科書を作ろうとしている」と話した。

教育委員長選任問題について、「日本は戦前、天皇中心の中央集権国家で子どもたちに軍国主義を植えつける教育を実施し、最終的に戦争につながった」とし、「これに対する反省で、独立行政機関である地方教育委員会を通じて教育するようにしたが、安倍首相はこれを元に戻して知事が教育委員長を選任できるようにする」と説明した。簡単に言えば、教育委員会の独立性をなくそうとしているのだ。

教科書学習指導要領の詳細化の問題点についても指摘した。1976年に「詳細な文部省の学習指導要領は違憲」という判決が下された。その後、学習指導要領は略式で作成し、教科書出版社の編集長が独自に決定して教科書を作った。安倍首相はこの原則も破棄しようとしている。

さらに、検定基準を具体化する。日本の過ちを指摘する侵略戦争や従軍慰安婦、中国南京大虐殺などの内容が記載された教科書は検定を通過しないようにするのが狙いだ。

俵氏は、「教科書を新しく作って教育委員長を統制しても、教師が教えなければ効果がないと考え、教員統制まで構想している」と憂慮した。

そして、「このような『教科書国定化』が現実になれば、軍国主義を強調した戦前の状況のように国家政策が子どもたちの考えを左右する恐ろしい世の中になるだろう」と警告した。

俵氏は、第2次安倍内閣の発足後、新たに起こる戦いをこれまでのどの闘争よりも重大だと感じている。俵氏は、「安倍政権の教育改悪が体系的であるため、今年3月にこれに反対する運動組織『安倍教育政策NO・平和と人権の教育を!ネットワーク』を立ち上げた」と話した。現在20の団体が参加して活動している。

俵氏は、「日本のメディアは安倍政権の教育政策の本質についてほとんど報道していない」と運動の困難を打ち明けた。そのため、右翼の脅威にもかかわらず、市民に直接訴える正攻法を選んだ。従来どおりの方式だ。講演や集会、イベントのほかに、3月からは50円(約550ウォン)のパンフレット『どうする安倍政権の「教育再生」』を作成し、6月までに1万7000部を売った。4月からは本にして書店で販売している。

俵氏は、「最近の日本の右傾化で活動が萎縮していないか」という質問に、「良心勢力の活動は全く萎縮していない」ときっぱりと答えた。