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28日間の「奇病地獄」

Posted June. 15, 2013 04:23,   

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驚くほどの緻密な展開、圧倒的な吸引力、叙事の力…。チョン・ユジョン氏は2011年3月に出した『7年の夜』で韓国小説の新たな地平を開いたと絶賛された。現在49刷りのステディーセラーとなった『7年の夜』は約30万部売れた。読者と文壇は彼女の次回作を指折り数えて待ってきた。

2年3ヵ月ぶりに戻ってきたチョン氏の新作を読むと、こんな言葉が浮んだ。「名不虚伝(その名に恥じないという意味)」。2011年末に草稿を完成した後1年半近くかけて手直ししたチョン氏は、欠点のない完全体のストーリーを世に出した。国内の文学市場が不況の中、チョン氏の登場は祝福であり希望だ。

ソウルに接する京畿道(キョンギド)北部にある仮想の都市「ファヤン」。人口29万人のこの都市に「真っ赤な目」という伝染病が発生する。目が血の色に変わるのが特徴のこの病気にかかると、40度以上の高熱と呼吸困難、肺出血の症状を見せ、数日内に死に至る。最初に発病した中年男性の死亡後、病気は彼の隣人、彼を病院に搬送した救急隊員を中心に広まる。本のタイトルは28日間の混沌を表す。人獣共通感染症ということが確認されただけでどのように感染するのか分からない状態で感染者と死亡者が急増すると、政府はファヤン市を封鎖する。

世紀末の映画や小説でよく見られるお馴染みの展開とも言える。しかし、著者はこのようなディストピアで現れる人間の本性を徹底的に暴く。暴力、裏切り、絶望、救援、博愛…。著者は1月に東亜(トンア)日報とのインタビューで「面白い本を書きたい」と語ったが、本は読む楽しみに加えて深い感動まで与える。

序盤は少し忍耐が必要だ。作品は、獣医師のジェヒョン、救急隊員ギジュン、新聞記者ユンジュ、看護師スジン、公益勤務要員であり殺人魔のドンヘ、そして闘犬だったリンゴの目を通して地獄と化すファヤンを描くが、彼らの紹介で序盤約100ページを割いているためだ。しかし、最初の発病者が出た後に話に弾みがつくと、その慣性で残りの400ページが目まぐるしく展開する。韓国小説の中でこのように魅力的な「ページターナー(page turner・ページをめくる手が止まらないほど面白い本)」に出会うことは容易でない。

話の展開の方式も興味深い。ジェヒョンをはじめ小説を展開していく6つの視線が交差して1つの事件を多角的に見せる。例えば、リンゴとギジュンの激闘でのリンゴとギジュンの視線、そしてそれを見守るジェヒョンとユンジュの視線が交差し、状況を立体的に描き出す。活字化された映像を見る感じだ。本を閉じると、燃える都市となったファヤン、その中で絶叫する人々の叫びが聞こえるようだ。

今年の夏休みにお薦めの本だ。旅行先に持って行った本がつまらないと怒りが込み上げる。この本はそんな心配はない。