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「失敗を認め出直しを模索する」 フィンランドの失敗談交流会

「失敗を認め出直しを模索する」 フィンランドの失敗談交流会

Posted June. 10, 2013 07:47,   

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「なぜ、失敗を恥ずかしく思うんですか?これからは失敗の経験談を堂々と語りましょう」。

10年10月13日、フィンランド・ヘルシンキでは、「失敗の日(Day for Failure)という見慣れない行事が催された。自分の失敗談を、ほかの人たちに語り、立ち直る方法について模索しようという趣旨だった。

ギリシャから始まった欧州財政危機は、欧州各国の景気を大幅に萎縮させた。ご多聞にもれず、フィンランドも例外では無かった。世界トップの携帯電話メーカーであり、フィンランドの代表的輸出企業・ノキアの売上げや営業利益は、07年以降減り続け、世界市場のシェアも、09年の約40%をピークに下り坂を歩んだ。造船や製紙など、フィンランドのほかの主力産業も、売上げが減少した。大手企業の職員らは、リストラを心配した。

当時、フィンランド・アールト大学の「アールトス(AaltoES)」という会で活動していた学生らは、このような空気を変えたいと思っていた。アールトスは、米スタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)のベンチャー精神を目にし、刺激を受けたアールト大学の学生らが、フィンランドに企業家精神や挑戦文化を植えつけるという目的で、09年に立ち上げた会だ。

●「失敗も資産」

アールトスはまず、社会全般に巣くっている敗北感を無くすことに焦点を合わせた。このように始まった初の行事は、国民から芳しい反響を得た。11年は、ノキアのヨルマ・オリラ名誉会長など、フィンランドの有名企業家30人あまりが行事に参加し、自分の失敗談について正直に打ち明けた。アールトスによると、フィンランド国民約500万人の4分の1が、新聞や放送、インターネットなどを通じて、失敗の日の行事を見守った。同行事は、フィンランドだけでなく、世界各国に広まり、昨年は、韓国や英国、ドイツ、カナダ、スウェーデンなど、16ヵ国で開かれた。

フィンランドで会ったベンチャー企業家や学生らは、「フィンランドのベンチャー生態系の構築は、現在進行形だ」とし、「失敗を認め、新たなビジネスに挑戦できるよう支援するインフラや文化が、早いテンポで定着していることが、その証拠だ」と主張した。

代表的な事例が、モバイルゲーム専門企業・ロビオの成功だ。同社は09年、スマートフォンゲーム「アングリーバード」を発売し、60ヵ国のアプリストアで、1年以上もゲーム分野のトップを守るなど、世界で大成功を収めた。ロビオのミカエル・ヘッド最高経営者(CEO)は、アングリーバードをヒットさせる前まで、51件のゲームを発売した。一部の小さな成功を納めたりしたが、その大半は失敗に終わった。もし、失敗が彼の足をひっぱていたなら、アングリーバードは、この世に出てこなかっただろう。

フィンランドは、このような文化を広めるため、10年を前後に、起業生態系関連のさまざまな制度を導入した。大学や企業などの研究開発(R&D)プロジェクトに資金を支援する政府機関であるテケスは、09年、大手企業が利用しないR&Dの成果を、中小企業につなげる「イノベーションミール」プログラムを導入した。10年には、ヘルシンキ工科大学と美術デザイン大学、経済大学を統合させたアールト大学を発足させ、統合的人材を育成している。

学生らの自主的な動きも、フィンランドの創造経済の好循環システムを構築するエンジンの一つとなっている。アールトスが、ベンチャー起業家を支援する「スタートアップサウナ」を組織するなど、起業文化の拡大に乗り出すと、これに刺激を受けたほかの大学の学生らは、起業サークル「アントラープランナーシップソサイエティ」を作って、活発に活動している。アールト大学・企業家精神センター(ACE)のタピオ・シーク責任者は、「失敗を恐れない学生らが主導する起業文化の拡大は、フィンランド起業生態系の力だ」と話した。

企業も、起業失敗の克服に一役買っている。11年に始まったノキアの退職者支援プログラム「ノキアブリッジ」は、リストラされた職員らが、新たにスタートするのに大きく貢献している。1月にノキアを辞めたペルティ・イケレイネン氏は最近、情報技術(IT)コンサルティング会社を立ち上げた。氏は、「ノキアブリッジで、履歴書の書き方や事業企画案の作成法など、再就職や起業に必要なさまざまなことについて学んだ」とし、「今は、どんなことにもチャンレンジできる自信を手にした」と話した。

●「大きな目標より小さな成功が重要」

創造経済の先進国で会ったベンチャー関係者らは、きちんとした起業生態系を造成するためには、大きな成功にこだわってはならないとアドバイスした。英ロンドンのゴールドスミス大学・企業家精神センターは、教育の焦点を、「小さな成功」にあわせている。そのため、起業家らに対し、まず、準備しているアイデアを通じて、どれほど多くの金を稼ぎたいか、投資を受けたい金額はどのぐらいか、などについて尋ねる。その後、自分が調達できる資金規模やさまざまな支援機関の投資基準などを、きめ細かく調べさせる。このような過程を経て、自分のアイデアが持っている価値を、冷静に眺めることのできる目が、起業家らにできる。ゴールドスミス大学のシアン・プライム教授は、「理想と現実との隔たりを縮め、自分が耐えうる規模の小さな成功からチャレンジするよう、教えるのが目標だ」と話した。

ドイツ・ベルリンのベンチャーインキュベーターらも、起業家らに小さな成功を呼びかけている。エピックカンパニーのマート・ペリク代表は、「最初から、フェイスブックやグーグルなどの大企業を目標にすれば、失敗したときの打撃も、その分だけ大きく、立ち直りづらい」とし、「目線を現実にあわせ、小さいことからはじめるのが、成功の可能性を高める方法だ」とアドバイスした。