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[オピニオン]高速道路の退場

Posted March. 16, 2013 06:54,   

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日本の作家、村上春樹のベストセラー小説「1Q84」の最初の場面は、渋滞した高速道路だ。女主人公の青豆は、DVの男性を殺しに行く途中、タクシーに乗って渋滞に巻き込まれ、高速道路で立ち往生する。焦る青豆にタクシーの運転手は地上に通じる出口を教える。非常階段で降りてみると、青豆の目の前には、少し前とはまったく違った見慣れない時空間の世界が広がる。

◆小説に出てくる三軒茶屋の高速道路でなくとも、東京ではどこでも空を横切る道路を目にする。超高層ビルの森を背景に、巨大なコンクリートの柱で支えられた道路の上で、車がスピードを出して走る風景は、まさにSF映画の未来都市を思わせる。日本は1964年の東京オリンピックの前に、渋滞緩和ために多くの高速道路を建設した。韓国も1960年代末からソウルをはじめ全国各地で高速道路が建設されたが、清渓川(チョンゲチョン)復元事業で2006年に清渓高速道路が撤去された後、1つ2つ退場する傾向にある。以前は車のスムーズな通行が最優先だったなら、今は眺望権や都市の美観といった生活の質への認識が高まったためだろう。

◆14日、ソウル市が国内初の高速道路である阿峴(アヒョン)高速道路を撤去すると発表した。1968年9月19日に竣工したこの高速道路は、往復4車線、全長989メートルある。撤去理由は、老朽化のため崩壊の危険があるうえ、補修費用だけで80億ウォンかかるためだ。ソウル市は、車中心から人中心の政策を標榜し、2002年東大門区典農洞(トンデムンク・チョンノンドン)のトクチョン高架車道が撤去されてから、現在までに15の高速道路が消えた。来年6月に阿峴高速道路が撤去されれば、ソウルには84の高速道路が残ることになる。

◆高速道路の下の放置された空き地が、不法駐車場や資材置き場に使われ、周辺住民から苦情が絶えない。暗い空間が地域の発展を妨害するためだ。昨年、ソウル西大門区(ソデムンク)の弘済(ホンジェ)高速道路を撤去した後、区庁が区政満足度を調査すると、36.6%が「高速道路の撤去」が最も満足した事業だったと答えた。しかし、見なれた風景が消えることにさびしさを感じる人もいる。米国から1年ぶりに帰国したある作家は、「高速道路がなくなった恵化洞(ヘファドン)ロータリーを見る度に、若い頃の思い出の一片を失ったようだ」と残念がった。短期間の産業化の遺産が、その速度よりも早く消える姿は、改めて一時代を振り返らせる。

高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com