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「車輪が空中に浮いた気持ち」 深夜の時速380キロの狂乱の疾走

「車輪が空中に浮いた気持ち」 深夜の時速380キロの狂乱の疾走

Posted February. 20, 2013 08:34,   

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「スピードを下げてください。早く」

8日、仁川市中区中山洞(インチョン・チュング・チュンサンドン)の新空港高速道路。パトロールカーの隣をワゴン車が「さっと」通り過ぎてしまった。スピードの出しすぎ現場を目で確認しようと、警察に同行してからわずか5分も経っていなかった。あまりの速さで、瞬く間に視野から遠ざかっていった。ここの制限速度は時速100キロ。前を走っていた複数の車を、瞬く間に追い抜いた黒い車は、一見しても時速200キロ近く出している。

パトロールカーが警告アナウンスを流しながら、追い上げた。最初はこれ見よがしにさらにスピードを上げていた車は、まもなく徐々にスピードを下げた。高速道路・パトロール隊のイ・スンヒョク警長は、「昼間はそれでもましなほうだ」といい、「夜間は取締りが容易でないことを悪用して、時速300キロ近くで暴走するドライバーらも少なくない」と話した。最近ここでは、250キロのスピードでいわば「テビン」(群れを成して走る行為)をしていたBMWやベンツなど、外国製車両6台が摘発され、11日の昼間は、高級外国製車のフェラリーまでスピード競争を繰り広げ、一台が中央分離帯やガードレールに突っ込む事故を起こしたこともある。

●自由路などは狂乱のパーティ会場

「龍仁(ヨンイン)—ソウル間高速道路は走るのに適してますよ。水原(スウォン)までは監視カメラが一台しかなく、『刀さばき(車の間を勝手に割り込みながら走る乱暴なドライバーの間の隠語)』しながら走れば、時速200キロまで走ることができます」、「仁川新空港高速道路ではようやく時速300キロをクリアしました。次は350キロが目標です」

ある自動車同好会のネット上のコミュニティに掲載された書き込みだ。ここの掲示板には、複数の車が集まって、危なっかしくレースを繰り広げたり、最高速度で走った経験談が連日、掲載されている。雨の降る日、「滑りにご注意」という表示板を通り過ぎて、時速270キロで走る様子を撮影したものから、ほかの車の間を危険に割り込みながらスピードを誇る「刀さばき」動画まで、多岐にわたっている。

問題は、経験談の背景場所となっているところが、一般のドライバーらも通る道路であること。彼らは、△ソウル外郭循環高速道路、△仁川新空港高速道路、△一山(イルサン)自由路、△東灘(トンタン)新都市などを、最大350キロのスピードで走れる「パーティ会場」として取り上げている。

北岳(プクアク)スカイウェーは、急カーブの区間が多く、体が揺れるほどスリルあふれるレーシングを繰り広げるのに適しており、自由路は、相当長い区間がまっすぐ伸びている上、複数の車がレースを繰り広げるほど広く、暴走族のたまり場となっている。そのほか、ソウル外郭循環高速道路の松楸(ソンチュ)インターチェンジと議政府(イジョンブ)インターチェンジの間の「サペサントンネル(約4キロ)」は、トンネル入口から出口まで、2台以上の車が競争しながら、「勝者」を決めたり、車の最高速度を測定するコースとして悪名をとどろかせている。

トンネルは大型事故が起きれば、アプローチするのが容易ではない閉鎖的構造となっており、制限速度をより厳しく守りながら、安全運転をしなければならないが、一部の自分勝手なドライバーらにとっては、自動車の性能試験会場であり、レーシング会場となっている。

ソウル地方警察庁のキム・ホンジュ交通犯罪捜査班・チーム長は、「かつては暴走といえば、オートバイを思い浮かべたが、最近は自動車の暴走件数がより多く、深刻な水準だ」とし、「オートバイは主にソウル都心で暴走をし、取締りが容易だったが、車は、ソウルの外郭で走るため、取り締まりも難しく、高速道路を主に利用するだけに、事故が起きればその危険性もより大きい」と述べた。

●「いったい何が間違っている?」という暴走ドライバー

暴走当事者らの反応はよそよそしい。最近、警察の暴走族取締りで摘発され、検察への送検を待っているイ某容疑者(29)は、「主に、新空港高速道路や外郭循環高速道路で暴走を楽しんできた」と自分を紹介した。「自分で走った最高スピードは、時速380キロだった」とし、「車輪が回るのではなく、空中に浮かんでいる気がした時、ストレスが全て解消された」と話した。にもかかわらず、イ容疑者は、「人通りの少ない道路で走っているため、『暴走族』呼ばわりされるのは悔しい」と抗弁した。

時速380キロとは、1秒に実に106メートルを走れるスピードだ。道に予期せぬ小さな石ころが一つでもあったり、前の車がいきなり車線を変更したりすれば、ドライバーがショートトラックのスケート選手に匹敵するほどの優れた運動神経を持っていても、大型事故は避けられない。

そのため、一般ドライバーらは深夜に道路を走る時、不安を感じざるを得ない。京畿道坡州市(キョンギド・パジュシ)に住むファン・ジユン氏(32、女)は、「1ヵ月ほど前、深夜1時、自由路を走っていたところ、複数の暴走車を目撃した」とし、「できるだけ、暴走車両を避けながら運転したかったが、夜間にものすごいスピードで近づいては追い越し、前のほうでも千鳥足のように車線を変更しながら走って、冷や汗をかいた」と、胸をなでおろした経験を伝えた。警察にも、「暴走族のために不安で、運転ができない」という内容の通報電話が後を絶たない。

●あざ笑われる警察の取り締まり

警察による取り締まりは容易ではない。警察は、固定式監視カメラや携帯向けレーザー機器を利用して、スピードの出しすぎを取り締まっている。しかし、1台に2800万ウォンもするほど高く、カメラの台数が足りないのが現状だ。暗い夜間は性能をきちんと発揮できない携帯向けレーザーでは、暴走が激しくなる夜間の取り締まりは不可能だ。警察が走り回りながら一つ一つ現場を取り締まることに頼らざるを得ないが、新空港高速道路の場合、6人のパトロール隊員が3交代で勤務し、2人が高速道路全体を取り締まっている。

低い罰金も、暴走族の無鉄砲疾走をあおっているという指摘も多い。道路交通法上、取締りカメラに摘発されれば、規定速度から20キロを超えれば、乗用車の場合は3万ウォン、20〜40キロを超えれば6万ウォン、40キロ以上を超えれば9万ウォン、60キロは12万ウォンが科せられる。いくらスピードを出しすぎても、最高12万ウォンさえ払えば済む。

それさえも最近は、車ごとにカーナビが取り付けられており、カメラの前でだけそっとスピードを下げれば、摘発を避けることができる。「かかったら馬鹿」といわれるゆえんでもある。今月初頭、東灘テギョトンネルで、時速260キロで走りながら暴走を楽しんだという朴某氏(30)は、「たまに行われる移動取り締まりに摘発されれば、『本当についてない』と思っている仲間が多い」とし、「監視カメラに取り締まられても、『自分が運転しなかった』と主張すれば、罰金と共に科せられる罰点も科せられず、罰金だけ払えばよい」と述べた。



sun10@donga.com