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[社説]世界の荒波をかき分け、奇跡の歴史を再び

[社説]世界の荒波をかき分け、奇跡の歴史を再び

Posted January. 01, 2013 04:53,   

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韓国的な容貌の歌手PSY(本名・パク・ジェサン)は歌った。「美しく愛おしい/美しく愛おしい/今から行けるとこまで行ってみようか」。PSYは馬乗りダンス1つでアジアを越え、米国、欧州、南米、オーストラリアへ、行けるところまで行った。2013年の癸巳年は巳年だ。1977年生まれのPSYも巳年だ。彼は「江南(カンナム)スタイル」で昨年、世界初ユーチューブ再生数10億件を突破し、歴史を新たに綴った。詩人金芝河(キム・ジハ)氏は、「恨(ハン)の多い韓国民族が興じる時、韓流が起きる」と言った。踊って歌を歌うことが好きな民族性に加え、情に厚い固有のコンテンツも先端テクノロジーのユーチューブと融合させ、グローバル舞台にのし上がったPSYは、グローバル化時代の韓国の競争力の象徴だ。

振り返れば、韓国国民の選択は常に賢明だった。共産化を阻止し、自由民主主義の基礎を固めた李承晩(イ・スンマン)大統領から均衡発展の時代精神を刻み入れた盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領まで、歴代大統領は誤りもあったが時代が求める役割を果たした。李明博(イ・ミョンバク)大統領も、世界的な金融危機にうまく対応したと評価されるだろう。2月25日に就任する第18代大統領の朴槿恵(パク・クンヘ)氏には、国民統合という時代の課題が待っている。

今回の大統領選挙で保守候補と進歩候補を支持する票は52対48に二分した。保守は支持候補が当選したからと思い上がってはいけない。進歩候補は落選したものの、過去の政権で当選したどの大統領よりも多くの票を獲得した。保守は、改革と変化を望む国民がそれだけ多いという事実を重く受け止めなければならない。既得権に安住して社会的弱者の声に無関心でなかったか、権威と慣行を前面に出し自己革新に疎かでなかったか、自省しなければならない。進歩は「分裂で滅びる」という俗説を覆すほどの大結集を果たした。しかし、自分だけが正しいという独善、自分以外はすべて敵といった二分法から抜け出さなければならない。そうしてこそ新しい国家発展のパラダイムを築く力を発揮できる。改革的保守と合理的進歩が牽制と均衡の中で共に櫓を漕いでいくなら、世界史的な荒波をうまくかき分けて行けるだろう。

初の女性大統領、初の過半数得票の大統領である朴槿恵氏の任期1年目は、今後5年間の任期の成否を分ける重要な時期だ。国民の精神と気概を結集すれば、再び奇跡の歴史を作り出すことができる。朴氏は、前だけを見てきたことで疎かにしたこと、逃してしまったことに気を止め、旧態政治を変えてこそ「新しい政治」を望む国民の心に接近できる。

その最初の試験台は人事になるだろう。大統合を成すには、慢性的な地域主義、縁故主義の根を断ち、腐敗を育てる情実資本主義の芽を断ち切らなければならない。いかなる大統領も任期中に全てのことは解決できない。後日、歴史家が朴槿恵政府について「民生の政府」、「統一の政府」などと評価する大きな絵を描き、集中しなければならない。地域や理念、世代の関係の上に所々穴が空き、食い違い、傷ついたところを埋め、包摂する政治であってこそ、社会統合が果たされる。

経済においても、2013年は社会的弱者を立ち上がらせ、低成長の足かせを取り除く道に進まなければならない。今、世界経済はパラダイムの変化を経験している。2008年の世界的な金融危機を機に、先進国から保護主義に向かい、低成長基調に入った。生産性と成長が足踏み状態であり、ユーロ圏の債務危機も世界の景気低迷もいつ終わるか先が見えない状況だ。重要なことは、どの経済システムかではなく、成長に必要な改革をやり遂げるリーダーの存在だと、モーガンスタンリーのエマージングマーケット責任者のルチル・シャルマは指摘した。シャルマ氏が、国民所得2万ドル台の国の中で年3%以上の成長が可能な国家と見た2国がチェコと韓国だ。

韓国経済は、2007年に1人あたりの国民所得2万ドルを成し遂げた後、5年間停滞している。今年の成長率も3%水準にとどまるという暗い展望が出ている。韓国経済は跳躍か沈滞かの岐路に立たされていると言っても過言ではない。世界の舞台で際立つための構造改革が必要だ。韓国人特有のスピード経営と創造的なグローバル化で対応すれば、世界の中心に立つ韓国の製造業は再び「ルネサンス」を作り出すだろう。

米国などの先進国は最近、産業のハードウェアにソフトウェアとインターネットを融合して新しい価値を創り出す「産業インターネット」で第3の産業革命を追求している。世界を再び驚かせるコリアモデルは、まさに科学技術と情報通信技術を産業に融合した「産業の江南スタイル」になり得る。ユーチューブの「江南スタイル」は、エンターテイメントのインターネット化だった。農業から製造業、サービス業まで全産業のインターネット化を通じて生産と価値の最大化を追求することが、朴氏が提示した大韓民国のロードマップ「創造経済論」だ。グローバルな人材を育て、創意的な融合人材が柔軟な労働環境で働けるようにするなら、雇用創出だけでなく低成長、少子化、高齢化の3重のくびきから脱することも可能だ。

構造改革のためには、企業や労働界、教育界、政府と市民社会まで苦痛を分担する社会的合意が欠かせない。韓国は昨年、人口5000万人で1人あたりの国民所得2万ドルを超える「20−50クラブ」に世界7番目に加入した。大企業叩きの経済民主化で、三星(サムソン)電子や現代(ヒョンデ)自動車といった世界市場で活動する数社の大企業の力を抑えることに熱中しては、30−50クラブ(国民所得3万ドルで人口5000万人)に進むどころか、20−50クラブも守ることは難しい。

韓国のように「恨」の多い民族性と熱烈な教育熱、断片化した労働運動の歴史があるアイルランドが社会協約のモデルになり得る。経済危機の克服に向け、1987年初め、労使政国家再建協約を成し遂げ、ついに植民地宗主国の英国を凌駕する「ケルティックタイガー」の経済奇跡を果たした。世界的な危機の影響で、2010年に国際通貨基金(IMF)の支援を受けたが、2015年まで持続する「社会パートナーシップ合意」を通じて、最も模範的に危機を克服した国とされている。アイルランドが果たした労使政合意を韓国ができない理由はない。

潜在成長率を4%台以上に引き上げるには、規制を解き、企業投資を活性化し、労働市場を柔軟にしなくてはならない。市場の勝者が成果を独占せず、ノブレス・オブリージュ(社会指導層の道徳的責務)の実践で先立に立たなければならない。出遅れた人々が再び汗を流して働けるよう教育訓練や職業の斡旋、所得支援などの社会的セキュリティを精巧に設けなければならない。「子どもを飢えさせない」という女性大統領が誠意を尽くせば、国民の心もついて来るだろう。漢江(ハンガン)の奇跡もこのように起きた。

韓半島をめぐる米国、中国、日本の3大国で新しいリーダーシップが本格的に登場し、国際情勢も相対的な米国の衰退の中、中国の台頭で新たな関係構築が進んでいる。軍事境界線の北には長距離ミサイル実験発射に成功し、濃縮ウラン弾を利用した3回目の核実験カードをちらつかせる29才「駆け出し」の指導者が強硬行動を続けている。

韓国のモデルだった日本が、現在は「世界ナンバーワン」から距離が遠のいている。英国のエコノミスト誌は最近、「バブル経済と財政赤字の憂慮なく先進経済が成長できる唯一の方法が貿易だ」と強調し、「日本も自国の問題の深刻さに悩むなら、環太平洋経済パートナー協定(TPP)に入るだろう」と指摘した。自由貿易の拡大は、個々の国家が経済成長と外交安保関係を共に堅固にできる手段だ。

周辺国の新しい指導者が国内政治に没頭する今が、韓国にとっては韓半島問題の解決で主導権を握り、中心的役割を果たせる機会だ。朴氏は、米国、中国、日本、ロシアの新しい指導者を相手に、北東アジアの平和と韓半島統一に向けた協力を引き出す使命を担わなければならない。北朝鮮を改革開放に導き、北朝鮮の核の脅威を取り除くための外交努力を強化する必要がある。激変期に堂々と声を出してこそ、北朝鮮の急変事態を含む危機が迫る時に韓国が主導権を握ることができる。

詩人の文貞姫(ムン・ジョンヒ)氏は、「ある人は世の中は寒い所だと言うが/またある人は/世の中は戦場であり、砂漠だと言うが/尾根に触れる春の日差しのような/暖かいこの手を/私はそれを平和だと呼ぶことにした」と書いた。私たちはそれを2013年の大韓民国と呼びたい。