モバイル向けクラウドサービス分野で世界トップの米「ドロップボックス」が、三星(サムスン)電子と提携し、韓国市場に正式進出した。
ドロップボックスのアプリケーション(アプリ)は、ユーザーが自分のファイルを、オンライン上のスペースに保存できる一種のウェブハードサービスであり、複数のモバイル機器と簡単に連動できるのが最大のメリットだ。例えば、パソコンにドロップボックスを搭載し、その中にファイルを入れておけば、このファイルをドロップボックスのアプリが搭載されているタブレットPCやスマートフォンから取り出すことができる。
このアプリが、三星電子のスマートフォンであるギャラクシーS3に基本搭載されることになり、注目を集めている。また、ドロップボックスは元々高画質(HD)映画1本の容量である2GB(ギガバイト)を無料で提供してきたが、ギャラクシーS3のユーザーに対しては2年間、50GBを提供することになる。ドロップボックスと三星電子とのこのような協力は、韓国クラウドサービス市場にメガコンペティションを招くという見方が出ている。
●「アイフォーン+アイクラウド」vs「ギャラクシーS3+ドロップボックス」
ドロップボックスは30日、ソウル江南区三成洞(カンナムグ・サムソンドン)のコエックス・インターコンチネンタルホテルで記者懇談会を開き、韓国市場への参入を公式宣言した。英語やフランス語、スペイン語、ドイツ語、日本語に続き、6番目の言語として韓国語に対応することになる。三星電子とのグローバル協力計画についても紹介した。同日、韓国を訪れたドロップボックスのモバイル事業開発担当最高責任者であるラルス・ペルソエニルセン氏は、「三星電子が世界200国で発売する全てのギャラクシーS3に、ドロップボックスのアプリが搭載される」と述べた。
ギャラクシーS3にドロップボックスが基本仕様として搭載されるのは、三星電子がアップルのような強力なクラウドコンピューテイングサービスを備えることを意味する。アップルは、ドロップボックスと似たアイクラウドを保有している。アイフォーンで保存したファイルを、アイパッドからも取り出すことができ、このような使い勝手の良さのため、アップルのユーザーらを、アップル製品につないでおく効果があった。
これまで、三星電子は、このようなサービスがなく、スマートフォンのギャラクシーSの販売台数の伸びが、タブレットPCの販売台数の増加へと繋がらなかった。今回、ギャラクシーS3の発売を機に、ドロップボックスという「キラーアプリ」を緊急輸血したのだ。三星電子がハードだけでなく、ソフトの面でもアップルと肩を並べて競争できる条件が整ったことになる。
●グローバルクラウドの激戦地となった韓国
ドロップボックスは使い勝手の良さのため、大したマーケティングもせず、世界で2億5000万台のモバイル機器を占領している。韓国に正式に発売される前からも、少なからぬユーザーがドロップボックスを使ってきたという。
このため、今回の韓国への進出は、携帯電話市場だけでなく、韓国でクラウドサービスを行っている国内外情報(IT)企業各社にも相当な影響を及ぼすものと見られる。
韓国内ポータル会社とモバイル通信会社各社はこれまで、ドロップボックスより多い容量(10〜50GB)を提供し、韓国語に対応することをメリットに掲げてきた。しかし、ドロップボックスがギャラクシーS3に50GBを無料で提供し、韓国語に対応することになり、このようなメリットは無くなった。
一方、同日、グーグルも韓国企業向けクラウドコンピューテイングサービスの専従組織を立ち上げ、韓国市場への本格的参入を宣言した。アマゾンはすでに、韓国市場でのサービスを開始しており、マイクロソフト(MS)も来月クラウドサービスを開始する。IT業界の専門家は、「韓国はグローバル的クラウドサービスの戦場となっている」とし、「積極的に立ち向かわなければ、スマートフォン革命で後れを取った過ちを繰り返すことになりかねない」と指摘した。
coolj@donga.com