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[オピニオン]国の認知症への対応

Posted January. 26, 2012 06:57,   

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6年前に老いた母を見とった朴さんは、今も自責の念に苛まれている。認知症を患っていた母は、1日の半分以上を正常な精神状態でないまま過ごし、たまに朴さんと顔を合わせると数十年前の記憶を思い出してはひそひそと呟くように言葉を発した。しかし、一人で用を足すことができないほど症状が悪化すると、70代の老人である朴さん夫婦は、ついに自宅での介護を断念した。母は老人ホームに入れられてから、半年も経たたないうちにこの世を去った。重症の認知症老人らと一緒に入れられたため、会話が途絶えると食事の量が減り、健康状態が急激に悪化したのだ。

◆韓国の65歳以上の老人のうち、約9%が認知症に苦しんでいる。認知機能が低下し認知症にかかる可能性の高い、軽い認知障害の老人は4人に1人の割合となっている。認知症患者の10人中1人が40〜50代の中年だ。認知症は、患者の品位や生活の質を落とし、家族には精神的、経済的負担を与え、「家庭破壊犯」とも言われている。高齢化や核家族化が進むと、「老人の子供」が認知症の両親の世話をしているうちに病気になることもある。健康保険公団は、認知症による社会・経済的費用を年間7兆ウォン以上と試算している。

◆認知症が完治する治療剤などないが、あらゆる種類の認知症は早期に発見し、積極的に治療をすれば、重症化を遅らせ、日常生活に支障を無くすこともできる。しかし、認知症の症状を、避けられない老化現象と捉えたため、治療の時期を逃し、その結果診療費が大きく増えるケースが多い。先進各国は、最初に認知症の症状が現れてから1.4年後に受診しているが、韓国はその2倍近い2.7年後に診療を受けているというデータもある。最近の出来事や人の名前を記憶することができず、簡単な道具も扱えないような初期症状が現れたら、直ちに病院を訪れるべきだと、専門家らはアドバイスしている。

◆昨年に認知症管理法を公布した政府が昨日、施行令案を議決した。国家認知症管理委員会を立ち上げ、政府が直接、認知症の予防や患者の管理を行う。保健福祉部長官が5年ごとに認知症管理に関する総合計画を、関連の中央行政機関の首脳や地方自治体長に通知すれば、彼らは毎年認知症管理を巡る実施計画をまとめることになる。老人を対象に、6ヵ月ごとに認知症の検診を実施する案も盛り込まれている。認知症患者を抱えている家庭にとっては、いかなる福祉政策よりも嬉しいニュースだ。選挙を意識した一過性の政策ではなく、苦痛をしっかりと受け止め、それを減らすための実行計画が求められる。

李亨三(イ・ヒョンサム)論説委員 hans@donga.com