アブラハム・カイパーは、オランダ改革派教会の牧師だった。魂の救済にのみ関心を持つ教会を批判し、１８７９年、キリスト教政党である反革命党（ＡＲＰ）を立ち上げた。ＡＲＰが一つの源流を形成したキリスト教民主党（ＣＤＡ）は、現在も政権政党だ。ドイツやイタリアにも第２次世界大戦後、社会主義政党の挑戦に立ち向かって、キリスト教政党が登場した。ドイツのキリスト教民主党（ＣＤＵ）—キリスト教社会党（ＣＳＵ）連合は、現在もドイツの最大政党であり、イタリアのキリスト教民主党（ＣＤ）は、１９９４年まで、最大政党だった。
◆韓国で、来年の総選挙を控え、キリスト教政党を立ち上げようという動きが出ている。キリスト教長老出身大統領の政権下でも、仏教やカトリックから集中的な攻撃を受けたという被害意識に、与党ハンナラ党が保守政党としても座を守れず、左派のほうに偏っているという不満が重なり、キリスト教政党の必要性が議論されている。「国や教会を建て直すための国民運動本部（代表会長＝チェ・ビョンドゥ牧師）は３０日、ソウル中区（チュング）の奬忠（チャンチュン）体育館で、政党発起人大会を開催する予定だ。
◆大韓民国憲法の政教分離の原則が宗教政党を排除するわけではないが、国内での宗教政党はその存在感がほとんどなかった。０２年、仏教界を自認した護国党は、大統領選挙の候補まで出したが、その後解散となった。統一教会・平和統一家庭党が０８年の総選挙の際、ほぼ全国から候補を出したが、支持率の低迷で政党登録が取り消された。０７年に立ち上げられたキリスト教の「キリスト愛の実践党」が現存の唯一の宗教政党だが、国会議席は確保できなかった。日本では仏教系創価学会が立ち上げた公明党が影響力を持っているのとは、対照的だ。
◆韓国キリスト教は、一つの声明を出すのが難しい構造となっている。仏教の曹溪宗（チョゲジョン）は総務院があり、教団を代表している。カトリックも司教会議を通じ、教界の意思を結集することができる。一方、キリスト教は、進歩と保守が韓国協会協議会（ＮＣＣＫ）と韓国キリスト教総連合会（韓基総）とに分かれている上、どちらとも、曹溪宗総務院やカトリックの司教会議に相応する代表性を持っていない。しかし、スクーク法制定の試みを頓挫させたことからも分かるように、キリスト教の影響力は無視できない。キリスト教が政党を作れば、他の宗教も政党立ち上げに乗り出しかねない。宗教政党の立ち上げをきっかけに、宗教同士の対立が再び浮き彫りになるのではないか気がかりである。
宋平仁（ソン・ピョンイン）論説委員 pisong@donga.com
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