エジプトの首都カイロのタハリール広場には、３０年間この国を鉄拳統治したムバラク前大統領が退いて６ヵ月余りが経った今も、毎週金曜日にはデモの参加者が集まる。不安と恐怖が蔓延した過去のデモとは大きく違う。警察の姿は見えず、人々はこれまでの不満を自由に表出している。エジプト国立図書館のムハンマド・サブル館長は、「独裁者が退いたからといって、直ちに社会が安定すると望むことは過度な欲だ。８７年に民主化運動を経験した韓国も、過渡期の後遺症をよく知っているだろう」と述べた。
民主化の変革期にあるエジプトの知識人の多くが、韓国はベンチマーキングの対象であり、模倣するモデルに挙げる。広場や大学で会った知識人は、韓国の民主化過程をよく知っていた。現在の状況を打開するには、韓国の輝かしい経済成長を発展モデルにする必要があるという声が多かった。
エジプトのテコンドープムセ国家代表チームのコーチ、ウェサム氏（３３）は、「数年前に韓国を訪れ、約６ヵ月間滞在し、６０年代の韓国再建の過程に関心を持つようになった。民主主義を成し遂げ、経済発展を果たした韓国を見て、エジプトも今は混乱しているが、いつかは跳躍すると信じて疑わない」と話した。
エジプトでの韓国語ブームは、今春の民主化デモの過程でも弱まることはなかった。０２年に開設された韓国大使館の韓国語講座は、当初は今年２月の開講予定だったが、民主化デモで３月２１日に開講した。エジプト全域に通行禁止令が下された時なので、申し込みの受付を４日間しかできなかったが、約４００人もの人が集まり、関係者を驚かせた。
昨年６月、エジプト国立図書館には韓国資料室が開設された。エジプトだけでなく、北アフリカ、中東地域全体で、特定国家の資料室が開設されたのは韓国資料室が初めて。ここには、韓国関連の蔵書約４０００冊とＣＤ２０００枚などが収蔵されており、今後５年間、毎年２００冊（約４００万ウォン分）の韓国関連図書が追加される。図書館の蔵書担当総責任者のジェイン・アブドル・ハディ局長は、「民主化の激動を経験し、エジプト人が韓国に対して持つ関心が高まっている。図書館の韓国図書を通じて、韓国の真の姿を学ぶ人が多い」と話した。
中東、アフリカ地域で最初に韓国語学科が開設されたカイロのアインシャムス大学も、知的韓流ブームを感じることができる。エジプト最高の語学大学がある同大学は、０５年、韓国国際交流財団と共同で韓国語学科を開設し、０９年に１期卒業生２８人を輩出した。卒業論文のタイトルも、「韓国の３・１運動とエジプトの１９１９革命比較研究」、「金東仁の小説『じゃがいも』を通じてみた韓国植民地時代の文学比較」など専門的で深い。
同学科には、特に女子学生が多い。１学年の在学生２５〜３０人のうち女子学生が２０〜２５人と圧倒的だ。男子学生が就職のために韓国語を学ぶという目的が明確なら、女子学生はドラマや歌のような韓国文化に浸って韓国語を学ぶ「純粋派」が多い。このため、女子学生の中には、より深く韓国語、韓国文学を学ぶために韓国留学をするケースもある。１年前に学部を卒業して大学院課程に在学中のアレ氏（２１）は、今年９月、高麗（コリョ）大学の大学院に進学し、韓国文学を学ぶ予定だ。
就職難に苦しむエジプトの若者たちに「韓流」は職業を得ることができる新たな機会でもある。韓国語科４年生の男子学生は、三星（サムソン）電子やＬＧ電子、現代（ヒョンデ）自動車のような韓国系企業に就職したり、韓国文学をアラビア語に翻訳することを望んでいる。
卒業後、三星電子に就職したサラ氏（２２）は、後輩のロールモデルだ。会社に勤め、学業と講師を並行させるパワフルな女性だ。会社の仕事が終われば、大学院にも通い、１、３年の後輩に韓国語も教える。サラ氏も、９月にソウル大学言語学修士課程に入学し、韓国音韻論と音声学を学ぶ計画だ。
エジプトの観光産業の人材を育てるヘルワン大学観光学部は、０９年９月、韓国語を第２外国語科目に採択した。韓国語より先にエジプトに上陸した中国語と日本語は、まだ第２外国語に採択されていない。
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