「香港でペーパーカンパニー（書類上の会社）を作れば、税金を納めなくてもいいんですって？」
「はい、インボイス（貿易取引の書類）さえ、うまく書けば、会社の買入や売上、利益を社長の思い通りに調整することもできます。事実上、希望金額の税金になります」。
「資金運用が一段と楽になるそうだが、具体的にどのように資金運用ができるんですか。自分の身辺を隠し、会社を作ることもできますか？」
「社長が韓国からインターネットバンキングで、香港に作ったペーパーカンパニーの口座預金を簡単に第３国へ振り込むことができます。我々は、会社の株主や取締役の役割も代行しておりますので、社長が同社の実所有者であることは、誰も気付きません」
記者が６日、香港に本社のあるペーパーカンパニー設立代行会社所属のブローカーと電話で交わした相談内容だ。東亜（トンア）日報の取材結果、このようなブローカーは、国内企業関係者などを相手に、「税テク」や「資金運用」できるとし、香港にペーパーカンパニーを設立することを勧誘するメールを無差別に送っていることが分かった。
●「税金は希望金額だけ」と誘惑
ペーパーカンパニーは言葉通り、事務所や職員など物理的な実態はなく、書類上のみで存在する会社を意味する。最近、最高裁が香港などにペーパーカンパニーを作り、自社の船舶を同社に引渡し、船舶賃貸収入などの税金を脱税した国内船舶会社代表に対し、数千億ウォンの税金を課した国税庁の処分は妥当だという判決を下し、関心を集めている。
法人設立代行業者のブローカーらは、香港に法人さえあれば、△外国為替管理法がなく、資金を無制限に出し入れでき、△韓国より法人税率などが低く、合法的な節税が可能で、△会社の実所有者の身辺を隠せるメリットがあると誘惑する。
香港は、以前から法人設立の手続きが簡単で、外貨取引についての規制も複雑でなく、バージンアイルランドやケイマン諸島などと共に、「ペーパーカンパニー天国」と呼ばれている。香港内にも、「中身のない貝会社（空殼公司）」という異名まであるほどだ。実態のない会社という意味だ。
設立自体は合法で、実際、節税効果も一部あるため、現地にはペーパーカンパニーの設立を代行する業者もあり、ペーパーカンパニーの住所地や連絡先などを提供する「バーチャル（Ｖｉｒｔｕａｌ）オフィスサービス」も盛んに行われている。
問題は一部の代行業者や所属ブローカーが、脱税や資産隠ぺい、裏金づくりに有利なことを仄めかし、国内企業関係者らを誘惑していることだ。先に紹介したブローカーとの相談内容のように、上辺では、「節税、資金運用の円滑」を掲げながら、実際には、資産隠ぺいや資金洗浄などが可能なことをひそかに暗示している。
三星（サムスン）経済研究所のチョン・ヒョチャン首席研究員は、「外国為替管理法は、企業の正常な貿易取引に支障を与えるほど複雑ではなく、ただ個人の巨額の外貨振込みを制限しているぐらいだ」とし、「外国へ巨額資金を預け入れようとする個人が、正常な貿易取引を装う手口で、ペーパーカンパニーを利用する可能性がある」と話した。ＫＯＴＲＡ香港支社の関係者も、「香港は、英国領のバージンアイルランドなど、租税回避国との資金交流が多く、（香港所在のペーパーカンパニーと）これらの地域とが連携した資金洗浄や脱税が行われる可能性がある」と話した。
●税務当局、香港と連携捜査強化
価値のない商品をペーパーカンパニーから輸入し、物品代金という名目で、外貨を振り込む方法も、ペーパーカンパニーを活用した代表的な資産隠ぺい手口だ。韓彰伶（ハン・チャンリョン）関税庁・外貨調査課長は、「ひとまず、お金を振り込んだ後、『品物に問題がある』と送り返し、輸入を何度か繰り返すと、巨額の資産を簡単に海外へ移動させることができる」と話した。また、受けてもいない経営諮問をペーパーカンパニーがやったかのように、書類を偽造し、巨額の諮問料を支払い、この資金を再び外国人からの直接投資金であるかのように、国内へ持ち込み、会社資金を裏金にする。
香港のペーパーカンパニーが、資産隠ぺいや資金洗浄のルートに使われる事例が増え、当局も緊迫している。関税庁によると、香港関連の資金洗浄や財産隠ぺいなどの不法外貨取引を巡る取締り金額は、昨年５１９４億ウォンに達した。０８年（４１０４億ウォン）や０９年（２２６９億ウォン）より、大幅に増加した。関税庁は先月２７日、香港関税庁の外貨調査捜査要員を招き、香港でのペーパーカンパニー設立や運営方法、租税回避の手口などについての説明を聞き、共助捜査の強化に向け、セミナーを開催した。
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