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チアチア族少年の夢に見た韓国旅行

Posted July. 30, 2010 08:12,   

한국어

「リーン、リーン。電話ですよ」

「ガチャ、もしもし、アバヴィン先生いらっしゃいますか」

「先生はいま授業中です」

150センチの背、やせた体、にきびが所々にある16才の少年は、受話器を握るまねをして、このように韓国語で言った。そして、サリアント君は、木の机の上の物を指して、「これはノートです」、「あれは鉛筆です」と言った。

「ママとパパから時々、『アント、誰かに見られたらおかしな子だと思われるわよ』と言われます」。韓国語の勉強に熱中している「アント」を見て言った言葉だった。アントは、サリアントの愛称。アントは、インドネシア・スラウェシ州バウバウ市のソラウリオ地区で暮らしている。チアチア族の集落だ。アントが韓国語を学んだ期間は10ヵ月だが、彼の韓国語の実力は、同じ年齢の子どもに比べて抜群に良かった。バウバウ市の第6高校で第2外国語として韓国語を学んでいるアントは、家に帰ってからも4〜5時間、部屋に閉じこもって韓国語を勉強するという。アントの韓国語の実力は、通訳なしでコミュニケーションできるほどであり、記者も驚いた。

27日、アントは胸ときめく「特別な外出」をした。インドネシアのジャカルタ空港を出発し、24時間の飛行の末、韓国に到着した。アントは、韓国青少年団体協議会と女性家族部が共同主催した「2010年未来を開くアジア青少年キャンプ」に特別招待された2人のチアチア族少年の1人だ。アントとともに、バウバウ市第6高校2年に在学中のニニネルニアさん(16)も韓国にやってきた。

アントは、出国ゲートを出るやいなや、彼を迎えにきた韓国人ボランティアに「こんにちは、会えてうれしいです。私はインドネシアから来たチアチア族のサリアントです」と韓国語でしっかり話しかけた。「私の韓国語の先生は、韓国は今とても暑いと言っていました。でも、空港の中は寒いです」、「韓国は美しいです。バスに乗ってホテルに行くんですか」。空港を出るまでの間、アントは休むことなく「韓国語」で話していた。

アントは、韓国語は「難しいけどおもしろい」と言う。彼にはまともな韓国語教材も、韓国—インドネシア語の辞書もない。アントは、昨年12月にソウル市の招待で韓国に来た友人の辞書を2日間借りたと言い、「辞書があれば韓国語がもっと上手くなれる」と話した。

彼の家の戸の横には、ハングルで「韓国に行きたい」と書いた紙が貼ってある。訓民正音学会から派遣された国語教師のチョン・トクヨン氏(49)は、アントの家を訪れた際、その文字を見て感動したという。「辞書を手に入れた友人がとてもうらやましかったようです。それで、自分も韓国に行って、辞書を得て韓国語を学びたいと決心したのでしょう」。チョン先生は、アントのことを「韓国語に半分『狂った』子どものようだ」と言った。「毎朝、校門でアントが待っていて、私に話しかけてきます。教務室までついてきて、韓国語で何でも話します。トイレにもついてきて、『先生、トイレに行くんですか』と尋ねます」とチョン氏は舌を巻いた。

今年4月、未来を開くアジア青少年キャンプの主催者側から、チアチア族の青少年を招待したいという公文書が送られてきた時、チョン先生が真っ先に思い浮かんだのがアントだったのは、当然のことだった。「バウバウ市の第1、2高校で計250人の生徒に教えているが、アントほど興味をそそられた生徒はいませんでした。アントの手をとって、直接校長のところに行って『この子は必ず韓国に行くべき子です。きっと実力を上げて戻ってきます』と言いました」。

チョン先生の「強力な」推薦で、アントは全額援助で韓国に行くチアチア族青少年2人のうちの1人に選ばれた。これまで飛行機に乗ったことも、海外旅行をしたこともないアントは、このうれしいしらせを信じることができなかった。「私はとても幸せです。お母さん、お父さん、おばあさんも喜んでいます。私が誇らしいです」。アントは、初めてしらせを聞いた時を思い出しながら話した。家族は、アントが韓国に発つ前日の26日、アントのために小さな歓送パーティーを開いた。「元気で」と友達も激励した。「私の友達は思いやりがある」とアントは話した。

28日、キャンプのオリエンテーションを終えたアントは、宿舎に戻ると、かばんの中からハングルの本を取り出した。青少年キャンプに招待された23ヵ国、約300人の学生の大半は早く床についたが、その日午後11時までハングルの本を読んだ。「先生に尋ねることが多い。私は、この本の内容をすべてはわかりません」。アントは、翌日韓国語教師に尋ねる質問を几帳面にメモした。

アントは、青少年キャンプに参加した学生たちとともに29日、梨花(イファ)女子大学韓国語研修院に行った。ここで8月2日まで韓国語の授業を受ける。アントは、バングラデシュ、トルクメニスタン、タイなどから来た韓国語専攻の大学生10人とともに韓国語上級クラスに入った。高校生のアントのあどけない顔と小さな体はすぐに目についた。アントが、「私はサリアントですと言います」と言うと、数人の学生が、「サリアントと言います」と直した。アントは、「ありがとう」と照れながら笑った。

午前の授業が終わった後、アントは友人と梨花女子大学のECC(Ewha Campus Complex)地下4階の食堂で昼食を食べた。アントになぜそれほどまで韓国語が好きなのかと尋ねた。「ハングルでなければ、インドネシアの文字や英語のアルファベットを使います。チアチアの子音を使うことができません。でもハングルは使えます。文字ができて幸せです。ありがとう。私は韓国語の先生になりたいです」。