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[オピニオン]救済と規制

Posted September. 18, 2009 08:39,   

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「健康を懸念して医療保険に加入すれば、健康を害することをより多くやることになる」。ノーベル経済学賞受賞者であるケネス・アローが、1963年に発表した論文で指摘した内容である。肺がんへの心配からガン保険に加入して、なんとなく安心し、禁煙するどころか徐々にタバコの量が増えるようなことである。保険料を他人が負担するほど、このような「モラルハザード」はひどくなる。45年前に、モラルハザードを心配したアローのように、今は彼の甥である米ホワイトハウスのローレンス・サマーズ国家経済委員会・委員長の心配である。バラク・オバマ大統領の経済教師である同氏は、「現在、金融政策を手がける人々の大きな関心は、モラルハザードの問題だ」と語った。

◆リーマン・ブラザーズ破産から1年ぶりに、「カジノ資本主義」が戻ってきたという声が出ている。1年前までは、善玉企業に生まれ変わるかのように見えた金融会社各社が、早くもハイリスクの派生商品を盛んに販売しながら、高所得を手にしている。ゴールドマンサックスのエリートらは、グローバル危機以前と同様、平均70万ドルの年収を獲得している。オバマ大統領が、「政府の金融強化法案に立ち向かって戦うことなく、そのまま受け入れるよう」各金融会社に警告したほどだ。

◆ウォール街流のモラルハザードは、ほかならぬ政府によるばら撒き式の救済金融から始まったことを、オバマも、サマーズも知らない振りをしているようだ。グローバル経済を懸念する米政府が、心強い保険の役割を果たし、損失を抑えたため、各金融会社は再び徐々にカジノゲームに打ち込み始めている。ウォール街が悪いと、決め付けるわけにも行かない。わが国でも07年、2549億ウォンという地方公企業のうち、最大の赤字を記録したソウル都市鉄道公社社長が、08年基本給の556%をボーナスとして受け取るなど、地方自治体傘下の公企業の多くが、赤字でも過度なボーナスを得ている。負担は転嫁し、利益だけ手にする典型的なモラルハザードである。

◆1週間後に開かれる金融サミット(G20)首脳会議の場で、金融規制を強化することになれば、金融界のモラルハザードはなくなるだろうか。金融歴史家であるチャールズ・キンドルバーガーは、「昨今の危機打開のため、政府が介入すればするほど、その次に来るバブル(株や住宅、資産など)は深刻になる」と主張した。政府が救済であれ、規制であれ、いかなる形であれ、損害を減らしてくれるだろうと信じているため、市場の参加者らによるモラルハザードも、同様に増大することになるという。それはすでに30年も前の話しである。世間は相変わらず、変わっていない。

金順鄹(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com