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[オピニオン]冠廷アジア賞

Posted May. 14, 2008 08:37,   

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8年前、李鍾煥(イ・ジョンファン、84)三栄(サムヨン)グループ会長が、1000億ウォン規模の奨学財団を作ると明らかにし、当時、人々を大いに驚かせた。李会長は、慶尚南道宜寧(キョンサンナムド・ウィリョン)出身で、自らの手で商売を始め、14の系列会社を擁するまでになった中堅企業家だ。同じスーツを数年間も着続け、昼食はジャージャー麺で済ませたため、「ケチ会長」と呼ばれたりもした。財団の設立を発表した当時、妻が離婚請求および財産分割申請の訴訟を起こした。巨額の財産を社会貢献活動に全部つぎ込むことに家族が反対したといううわさも聞かれた。

◆李会長は2年後、私財10億ウォンを投じて、冠廷(クァンジョン)李鍾煥教育財団を設立し、翌年には約束した金額の3倍である3000億ウォンを拠出した。今は6000億ウォン台に膨らんでいる。企業の規模こそ三星(サムスン)、現代(ヒョンデ)とは比べ物にもならない、年売上高4000億ウォンの中堅グループが建てた財団だが、峨山(アサン)財団と三星文化財団に次ぐものだ。純粋な奨学財団としては国内最大だ。「冠廷奨学金」は、どんな条件もつけずに学生たちの経済状況を第一に考慮するといわれている。「財団の奨学生のなかから、ノーベル賞の受賞者が出てくるのを見届ける」のが、李会長の夢だ。冠廷は彼の雅号である。

◆李会長が寄付人生を送ることになった動機は、三栄化学の創業50周年を迎えて出版した自叙伝『正道』にも紹介されている。いつの間にか初老の年になると、「いくらたくさんの金を持っていても何の意味もない。適材適所に使って死にたい」という気持ちが益々強くなった。米国の大富豪がホテルで1人寂しく死んでいたというニュースもとても他人事とは思えなかった。一時、闘病していた二番目の息子を不憫に思って病院を建てる考えも起こしたが、「人を育てること」に金を使うことに決めた。あるインタビューでは、「善を持って悪を償いたい」と語っていた言葉も印象に残る。

◆「私が金を貯めた時代には稼ぎ方が荒かった。ロックフェラーも不法な取引、政経癒着、労組弾圧で財産を蓄えたが、晩年に社会にすべて寄付した。これには悪人と善人という世間の物差しをじっくり考えさせられるものがある。過去の私の人生にも確かに善悪があるはずだ。ただ、残りの人生は善を持って悪を償うことに没頭するつもりだ」。金に執着しなくなったことで気が楽になったと語る李会長が、今度はアジア人文学者と自然科学者に100万ドル(約10億ウォン)を与える冠廷アジア賞を作る。人文分野としては世界的にも稀な金額であり、ノーベル賞の賞金に匹敵するものだ。

許文明(ホ・ムンミョン)論説委員 angelhuh@donga.com