●不可解な中国のネット人物検索
米ユタ州のソルトレーク市に住むあるチベット人は先月中旬、突然舞い込んだ脅迫の手紙に困惑した。
先月7日、フランス・パリで北京五輪の聖火リレーを妨害した人物だと間違われ、自身の個人情報が詳細にインターネットに掲載されたのだ。中国のあるネットユーザーがパリでの聖火リレー当時の写真を公開し、彼のことを検索対象として手配指令を出したことから始まったことだった。
四川省成都に住むある女子高校生は、ネットショッピングモールで香水を買って代金の支払いが遅れたことで、個人情報が公開されたのはもとより、直接脅迫を受ける経験をした。
ショッピングモールの運営者が今年3月初め、中国の討論サイトである「テンヤ」に「ネットユーザー1人が香水を宅配で受け取っていながら代金を払わない」と書き込んだのが発端になった。この女子生徒は、二度にわけて2160人民元(約32万4000ウォン)分を注文し、宅配便で受け取った後、何度も督促メールを受けた。
その後、自分の名前と写真、学校の成績など詳細な個人情報がインターネットに掲載された。同じ成都に住むあるネットユーザーは、「速やかに謝罪して支払いをしなければ、近くに住む私が放って置かない」と脅した。
中国経営報は、最近、この女子高生の例を紹介しながら「テンヤにこの話が掲載されて以来、わずか3、4日後に女子高校生が代金を支払わされたため、警察よりもテンヤがもっと有用であるとの話も出回っている」と伝えた。
昨年12月末には、ある女性のネットユーザーが、夫の不倫で悩んだ挙句、投身自殺した妹の話をネットに掲載した。すると、ネットユーザーたちが投身自殺した女性の夫と、彼と不倫関係にあった女性の写真と個人資料を見つけて公開した。
●新たな秩序作りが課題
中国のネットユーザーたちは代金を支払わなかった女子高生について「商取引の秩序を乱し、ショッピングモール運営者を騙そうとした」として断罪した。しかし、商品代金の支払いが遅れて販売業者が受けた被害と、個人情報が公開されたことで女子高校生が被った被害のどちらがより大きいのかに関する議論は行われなかった。
また、不倫行為をした配偶者を告発した事件についても、中国マスコミは「ネットユーザーの義憤がもたらした結果」と紹介した。ところが、正常な法秩序が無視されたまま、当事者の一方的な主張だけを聞いて行われた「人民裁判」のワナに陥りかねない。
ソルトレークのチベット人のように、後になって潔白が証明されたとしても、被った被害を後から取り返すことは事実上困難だ。
このような中国のネットユーザーたちの人物検索行為は、「五輪の聖火リレー妨害者を探し出して処罰する動き」を通じて外部に広く知られるようになった。人物検索が「偏狭な民族主義」を動員する道具へと転落しかねない可能性を見せている。
もちろん、未だに各種の社会的な情報交流が円滑ではない中国において、インターネットが現実世界で効果的な影響力を発揮しているのも事実だ。
昨年10月に陝西省の林業局が公開した野生虎の写真が虚偽であることが判明し、今年3月末には河南省鄭州のある美容院が14歳の少女の髪を切って12万元(約1800万ウォン)もの金を受け取ったことが発覚し、店主が逮捕されたのも、いずれもネットユーザーの力を見せ付けた例である。
しかし、このようにネット上の人物検索が過度に人を断罪して処罰することに利用される現実は、新たな問題を生んでいると指摘する声が、中国内でも徐々に出ている。
中国社会科学院・情報化研究中心の姜奇平秘書長は、中国経営報に「人物検索の力量が高まっているだけに、どう(インターネット上の)新たな秩序を作るかが課題となる」と指摘した。
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