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染み込んだ富士山の精霊、しっとりとなった君の視線

染み込んだ富士山の精霊、しっとりとなった君の視線

Posted June. 29, 2007 03:53,   

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日本のシンボル、富士山。箱根(神奈川県)は富士山の雄姿を眺めるのに最適の「国民観光地」だ。山岳と渓谷のど真ん中に構えている箱根。そこでも富士山の眺望に一番よい場所は「芦野」と呼ばれる巨大な湖だ。晴れ間が広がって風の多い朝、湖の水面に映る富士山の姿こそ、箱根を訪れた人なら誰でも期待する日本第一の風景だ。

山岳観光地の箱根。ここの観光ルーツは特別だ。登山列車と登山バス、ロープウェーとケーブルカー(地中ケーブルで上り下りする電車)が隅々まで運行される。湖では観光船も運航される。観光の中心軸は鉄道駅のある小田原から早雲山の向こう側までつながる渓谷。小田原駅(東京を結ぶ小田急線の鉄道駅)は箱根の関門だ。

旅館の武蔵野別館は、その早雲山の下に広がっている渓谷の中間の宮下にある。宮下は600年余りの歴史を誇る由緒のある温泉の町。この町の前の道路が国道1号線であることを見れば、ここが東京の人にどれほど愛される温泉だったかが分かる。

山の中腹の武蔵野別館。自動車も行き難い険しい丘の中間にある。1968年にオープンしてもう40年目になるが、昨日オープンしたばかりのように相変わらずきれいに管理されている。到着した時間はお客が退室する午前10時。お客の見送りにお上さんと仲居さんが玄関の外に出ていた。丁寧にお辞儀をした後、お客を乗せた車が見えなくなるまで、絶えず手を振るその礼儀正しさ。日本全国のどこの旅館も変わらないが、特にこの武蔵野別館ではさらに真率に感じられた。たぶん旅館伝統の接待文化と品位を維持して仕えようとする努力のためだろう。

そのような伝統の旅館だが、おかみさんは若い世代の人だった。初めて案内された玄関の休憩室。ソファーの正面の大型スクリーンに富士山の動画が透写されていた。空中撮影した映像で見る富士山の威容は、想像よりすごかった。見回った室内は廊下まで全部畳みになっていた。「それでスリッパをお履きにならなくても結構でございます。素足で歩かれてもよろしいですので、騒音もなく居心地がよいのでございます」。

武蔵野別館の場所取りは完璧だった。露天風呂が外部の人の目に露出される危険が全くない森の中に構えているのだ。このような地形を見てからこそ、私は旅館の名前の上に書いてある「四季の湯」という意味を見破ることができた。視線を意識する必要がないため、露天風呂を思う存分自然に開放し、そのおかげで入浴客は四季折々の自然の風景を風呂の中から自由気ままに楽しむことができるようになっている。

そのような素敵な森の中に、露天風呂が9つもある。2つは大浴場、4つは客室専用。残りの3つが貸しきり用の温泉だ。私は貸しきりの温泉湯の3つの中で、「薫風」に行ってみた。旅館の建物の外に屋根を設けた階段の道で上がった森の中の小屋。その屋根の下に置かれている浴槽は正面が「コ」の字に開放されていて、周辺は新禄の森。森の日陰で緑色に染まった浴槽の水面が美しく光った。ヒノキの浴槽が自然と似合う姿もとても良かった。

案内書に書かれている温泉の水温は摂氏41度だ。この温度は記憶しておくと役立つ。休息と緊張の境界線であるからだ。1度だけ高くても人の体は休息の代わりに緊張モードに切り替えられる。その以下であってこそ、温泉浴が休息を極大化させる働きをする。案内書には温泉水の源泉に関する部分もある。日本温泉協会が認めた「天然温泉」マークと共に「温泉村第114号の源泉鉱泉地」と書かれた立て札が置かれた源泉穴の写真が載せられている。近くの早雲山の地下5キロ地点にあるマグマで温められた地下100メートルの水脈から湧き出される(摂氏69度)中炭酸塩泉で、婦人病や皮膚病、神経痛にも効果があるという説明だ。

風呂上りには浴衣に着替えるのが旅館の伝統だ。日本ならではの独特な文化で休息にとても効果的だ。温泉浴が体の緊張をほぐしてくれるとすれば、浴衣は心と精神の緊張をほぐしてくれるからだ。温泉浴の後の渇きがお酒をさらにおいしく感じさせるのは自然な現象。

武蔵野別館の「宵月亭」は、「風呂あがりに一杯やる」空間だ。ここに座るやいなや、おかみさんが色々な話をしながらお酒を一杯薦める。直接つけた18種の薬酒の中の一つで、お客の体質と健康によさそうなものを選んで薦める「処方酒」だ。目線に設置された長い窓ガラスを通じて広げられる緑の森の風景が心の安定を与えてくれる。きめ細かなおかみさんの心配りが一番よく感じられる素敵な空間だ。

武蔵野別館も部屋での食を提供している。同日夜、畳部屋のテーブルの上にリッチなご馳走が並べられた。このぐらいの高級旅館なら、食べ物の心配は無用だ。いつも期待以上であるからだ。心配事と言えば、次から次へと運ばれてくれるご馳走を最後まで食べきれずに途中で諦めるミスをするのではないかということだ。夕食は14品の懐石料理だが、白眉は生きているアワビの料理と温泉水にゆでた手豆腐。ワインセラーのバラエティー(多様な保有ワイン)も一流だ。客室は計21室、従業員は20人。



summer@donga.com