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韓国は今タイムスリップ中

Posted June. 14, 2006 03:45,   

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「昔にかえりたい!」

遠い「思い出」をくすぐる「タイムスリップマーケティング」が流行っている。大人になっても、子供時代に食べた食べ物や音楽、映画、ファッションに愛着を感じる人間の原初的な心理に着目したマーケティング手法のことだ。主に食べ物や飲み物、ファッション、化粧品など、日用品の分野で、懐かしさを感じさせるレトロ調の商品を発売している。だからといって昔の商品をそのまま販売しているわけではない。新製品にレトロなイメージを漂わせて中高年世代と若い世代を同時にターゲットにするのが最近のタイムスリップマーケティングの特徴である。

●振り返ろう、昔の日々を

「見ただけではわからないよ〜お隣の奥さんもほしがってね〜」

最近、醤油メーカーのセムピョは、45年前のラジオCMを昔のバージョンそのまま流し始めた。醤油の味は変わったが、ラジオCMは1961年オンエアされた歌手金サンヒさんのバージョンである。

食品業界はノスタルジアを刺激するレトロの嵐が吹き荒れている分野の一つだ。時間が経っても、味や香りはそう簡単には忘れられないためだ。

昨年、ロッテサムガンは、36年前に発売したアイスクリームの「サムガンハード」を、ロッテチルソンは16年前の「デルモントタボンジュース」を売り出した。

名前は昔のままだが、味やデザインは若者の好みを取り入れる傾向がある。

ヘテ製菓のブラボーコーンは、今年4月、名前だけ残して味や製品デザインを一変させた。CMのモデルに俳優のダニエル・へニーを投入して、高級感をアピールしている。ビングレも最近、バナナ味牛乳の脂肪分を減らした「バナナ味スキムミルク」を発売した。

ビングレのユ・ジョンヒ代理は、「既存のマニアと若者世代を同時に攻略するための戦略だ」と述べている。

ファッション業界でもレトロ調はトレンドだ。昨年は1960年代のファッションスタイルが人気だったのに対し、最近は1980年代のスタイルが注目を浴びている。

化粧品も子どもの頃、「ママの化粧台」で見たような真っ赤な口紅が人気だ。

今年に入って、シャネル、ランコムなどの世界的なブランドが真っ赤な口紅を本命として打ち出すと、アモレパシフィック、LG生活健康も相次いで真っ赤な口紅を目玉商品として発売した。しばらくリップグロスに押されていたリップスティックが返り咲いたわけだ。

アモレパシフィックのラネズリップスティックは、今年の1〜3月期の売り上げが昨年同期比33%伸びた。

復活したファッションブランドもある。

最近、ヒョンジ・アパレルは、ノンノファッションが1989年に立ち上げた婦人服ブランドの「シャトレン」を買収した。ノンノの倒産でなくなったブランドを蘇らせたわけだ。俳優の李美姸(イ・ミヨン)は「15年前、シャトレンのファンだった」と述べ、シャトレンのCMモデル提案を快く引き受けたという。

ヒョンジ・アパレルのチェ・ビョンオ会長は「青春時代に着ていたシャトレンの思い出を忘れられずにいる40代の女性が主な顧客層だ」とした。

●「ノスタルジアは力強い」

「ユーモア、愛国心、恐怖、性、そしてノスタルジア」

広告業界には「特定の感情を刺激すれば注目度が高くなる」という法則がある。昔を懐かしむノスタルジアも広告制作において欠かせない素材である。

延世大学の金民植(キム・ミンシク)教授(心理学)は「人間は否定的な経験と肯定的な経験を同じ頻度で経験しても、肯定的な経験だけを記憶しようとする傾向がある」と述べる。

過去を美化しようとする性向のため、過ぎ去った日々を素材にしたものには好感を抱くというわけだ。

アモレ・パシフィックのナム・ヨンウ課長は「過去のイメージは、古い世代にはいい思い出を、若い世代には未知のものへの好奇心を呼び起こす」とした。

タイムスリップ・マーケティングには費用削減効果もある。

LG経済研究院の李ヨンス研究員は「新しいブランドを宣伝するには数百億ウォンがかかるのに比べ、レトロなブランドにかかるマーケティング費用は割安だ」とし、「しかし単なる注目効果にとどまり、実際の購入につながらない可能性もある」と述べた。



kimhs@donga.com