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[オピニオン]朝鮮王朝実録の返還

Posted June. 01, 2006 03:00,   

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朝鮮時代に歴史の記録の任務を担当した官吏は、史官だった。彼らは、朝廷会議に出席し、王と臣下の間で行き交う言葉を一つ一つ記録した。街で起る事も、見聞きしたとおりすべて書き留めた。史官が残した各種の記録は、史草と呼ばれる。記録文化の神髄とされる朝鮮王朝実録は、この史草を基にして作られた。

◆史官の実直な精神がうかがえる太宗(テジョン)時代のエピソードがある。王が、史官を避けるために寝殿で会議を開いたところ、史官は紙と筆を持ってついてきて、寝殿の外で耳をそば立てて記録した。怒った太宗は、史官を代えてしまったが、新しい史官は、初めから寝殿の中に入ってきたという。王が嫌がったもう一つの官吏が、言官だ。王に対する直言を担当する官吏だった。朝鮮の歴史が519年も続いたのは、史官と言官のお陰だという主張もある。

◆日本に奪われた朝鮮王朝実録47冊が、韓国に返還される。鼎足山(ジョンジョクサン)、太白山(テベクサン)、赤裳山(チョクサンサン)、五台山(オデサン)の4大史庫にそれぞれ保管されていた実録のうち、東京大学に持ち出された五大山本だ。世界文化遺産に選ばれるほどの韓国文化財を代表する王朝実録の帰還は、意味深い。文化財の略奪は、人類の貪欲さと破壊性を示す野蛮な行為だが、全世界が文明時代に入ったにもかかわらず、返還はほとんど成り立っていない。フランスが江華島(カンファド)から持ち去った外圭章閣(ウェキュジャンガク)図書の返還交渉が未だ遅々として進んでいないのもそうだ。ソウル大学に実録を返還することを決めた東京大学の行為は、高く評価される。

◆文化財庁は、外国が保管している韓国の文化財が約7万点に達し、そのうちの46%が日本にあると集計した。日帝の侵略過程で強奪された文化財の帰還を早める契機にしなければならない。文化財は、一度奪われれば取り戻すことが難しい。この事実からも、韓国内の歴史意識を整える必要を感じる。歴史という言葉が溢れているにもかかわらず、朝鮮王朝実録を作った昔の官吏たちの「実直な精神」は見当たらない。二度と文化財が奪われないよう、歴史づくりを考えなければならない。

洪賛植(ホン・チャンシク)論説委員 chansik@donga.com