「珪砂(石英砂)からスタートしたから珪砂で勝負をしないと」
鄭相永(チョン・サンヨン、70)KCCグループ名誉会長は最近、京畿道龍仁市(キョンギド・ヨンインシ)にあるKCC中央研究所を訪問することが多くなった。
未来事業として力点を置いているシリコン関連の研究陣を励ますためだ。
記者が中央研究所を尋ねた25日にも、鄭名誉会長は同地を訪問していた。鄭名誉会長は「KCCの未来がかかっている」と語るほど、シリコン事業に愛情を傾けている。
シリコン事業を総括しているKCC中央研究所の李ウォンホ常務は「鄭名誉会長はシリコン事業を人生の最後のビジネスと考えているようだ」と話した。
●「シリコンがKCCを生きのこらす」
鄭名誉会長は、故鄭周永(チョン・ジュヨン)現代(ヒョンデ)グループ創業主の一番下の弟だ。
現代家創業1世代の6男2女のうち、鄭仁永(チョン・インヨン、86)漢拏(ハンラ)グループ名誉会長と鄭相永KCC名誉会長、鄭ヒヨン(81)女史の3人が生存しているだけだ。特に今だに経営活動に関与している人物は鄭相永名誉会長ただ一人だ。
KCCの運営は長男である鄭夢進(チョン・モンジン)会長と次男である鄭夢翼(チョン・モンイク)社長が引き受けているが、経営の大きな枠組みはまだ鄭名誉会長が描いている。
「留学しろ」と兄(故鄭周永創業主)が言う事を聞かないで、社員7人を集めて1958年にソウル永登浦(ヨンドゥンポ)で「金剛(クムガン)スレート工業株式会社」を始めたのが、KCCグループの始まり。いつのまにか売上げ2兆8970億ウォン、純益2836億ウォンの堅実な会社へと成長した。
現在、ペイントと建築材分野で業界最高の競争力を持っているが、鄭名誉会長は使用分野に限りがない、シリコン事業がこれからのKCCの力になると信じている。
●「石から抽出した石油」
砂から抽出したケイ素を炭素と合成する過程で作られるシリコンは、「石から抽出した石油」と呼ばれる。原油高時代に石油に代替できる最高の資源として脚光を浴びている先端素材。
宇宙航空、軍需産業、自動車、半導体分野はもちろんのこと、化粧品、女性の人工乳房、コンドーム、リモコン、コンピューターのキーパッドにまでと、使われない所がない。シリコンで作ることができる製品だけで4000種にのぼる。
しかし、世界でシリコンの原料を独自の技術で大量生産できる所は少ない。
米国のダウコーニングとGE、日本のシンネス、ドイツのワッカーなどがメージャー企業で、韓国ではKCCが唯一にシリコーン原料を生産している。
10年余りの研究の末に独自開発に成功したKCCは、2004年に建てた全羅北道全州(チョンラブクド・チョンジュ)工場で年間3万トンを生産している。
しかし、鄭名誉会長は今年3000億ウォンを投資し、忠清南道瑞山市(チュンチョンナムド・ソサンシ)のテジュク地方産業団地に年産6万トン規模のシリコン工場を建てるなど、工場増設に1兆ウォンを投資する計画だ。2012年まで年産20万トンに規模を増やして、世界4大シリコン企業に跳躍するというのが鄭名誉会長の野望。
最近、現代エレベーターの株式を売却して1300億ウォンの資金を用意したのもシリコン工場の増設のためだった。
26日に会った長男の鄭夢進KCC会長は、「技術を学んで来いと言う父親の指示で、1990年代初めにロシア、中国、ウクライナなどにあるシリコン工場を数ヶ月ずつ訪れたことがある」とし、「シリコン事業のためにずいぶん努力してきた」と話した。
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