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[オピニオン]バチェレ大統領

Posted March. 13, 2006 08:06,   

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「このような条件なら大統領をするのも面白そうだ」。チリの初女性大統領として11日に就任したミチェル・バチェレ(54)大統領とのインタビューで、ドイツのシュピーゲル誌が投じた言葉だ。欧州が夢にも見ることのできない6%の経済成長を誇る国、民主主義と和解の象徴の人物、さらに国民の愛まで受けて、国政を始めるためだ。むろん、バチェレ大統領は、「私に最も重要なのは、人々の希望を叶えることだ」と丁重に答えた。

◆チリはカトリック国家の中でも、最も保守的で男性中心的な「マッチョ」国家に挙げられる。離婚が合法化されたのが、わずか1年半前だ。中絶という言葉は、進歩的な人でさえも口にすることをはばかる。そのような国で、無神論者のうえ離婚歴のある3児のシングルマザー大統領が誕生したということは衝撃的だ。そのため、バチェレ大統領の就任は、1980年代の経済自由化、1990年代の政治的民主化に続き、2000年代の文化的開放として評価される。

◆1973年9月11日に軍事クーデターが起きた時、彼女は21歳の医大生だった。空軍将校だった父親が処刑され、母親とともに酷い拷問を受け、ボーイフレンドは「行方不明」になった。以前、自分を拷問した人物に、サンチャゴ市内のビルのエレベーターで出くわしたこともある。しかし、バチェレ大統領は、憎悪を語る代わりに「その憎悪を逆手にとることに、私の人生を捧げてきた」と話した。政敵を攻撃しない包容と寛容が、彼女の力だ。

◆いくら人気が高いといっても、経済の支えがなければ、一時の泡にすぎない。チリは他の南米国家と違って、1980年代の軍事独裁の下でも、市場開放と民営化など、経済の自由化に成功した国に挙げられている。司法権が独立し、市民社会がしっかりしているためだ。そのため、民主主義に移行することもできた。最近、南米には「左から左への」の風が強く、バチェレ大統領も中道左派連合所属だが、看板が同じだからといって、まったく同じ左派政権とは言えない。イデオロギーにとらわれず、国民が豊かに暮らせるようにするという大統領に会ったチリがうらやましい。

金順徳(キム・スンドク)論説委員 yuri@donga.com