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急増する脱北者 韓国入りは超特急、定着は緩行

急増する脱北者 韓国入りは超特急、定着は緩行

Posted July. 28, 2004 22:56,   

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北朝鮮脱出からソウル入りまでの期間も急速に短縮されつつある。北朝鮮を脱出した時点からわずか8日後に韓国入りした事例が、先月初めて登場し、北朝鮮脱出から1ヵ月後に韓国に入国したケースも最近6件にのぼった。大量の北朝鮮脱出とスピードが相乗作用を起こし「北朝鮮脱出ラッシュ」を加速化させる様相となっている。

しかし、5000人を突破した脱北者の韓国社会での定着は、随時立ち止まる「緩行列車」のレベルだ。脱北者の適応能力にも問題があるが、それらを「市民の一員」として受け入れようとしない社会の雰囲気も問題だ。

▲韓国行きは「超特急」〓咸境北道清津市(ハムキョンブクド・チョンシ)に居住していたハン・ウンヒ(仮名。60)さんは、昨春、北朝鮮を脱出した娘から手紙を受けた。「中国で住んでいるから、来るように」との内容だった。故郷を離れるのが嫌だったが「お金をたくさん稼いだ」との話に心が揺れ「しばらくの間、旅行するつもりでいよう」と、こっそりと豆満江(トゥマンガン)を渡った。

ハンさんは延吉に到着した後、娘が中国ではなく、韓国で住んでいることを知った。娘との電話で「狂ったのか」と大声で叱ったりしたものの、結局、娘に説得され韓国行きを決心した。1000万ウォン(約100万円)を受け取ったブローカーは、ハンさんを朝鮮族(韓国系中国人)に見せかけるため、偽のパスポートを渡した。ハンさんは、長春に移動し、ソウルへの直航便に乗って、仁川(インチョン)国際空港に到着した。

清津を発ち、韓国入りするまでにかかった期間はわずか23日だった。最近、北朝鮮脱出は、ルートが多様化しているだけでなく、北朝鮮脱出−中間経由地−韓国行きの期間が、次第に短縮されつつある。成功の確率が高いルートが「開発」され、中間経由地の滞在期間が大幅に減っているのだ。

先月入国し、脱北者支援施設の「ハナ院」で教育を受けている脱北者Aさんの場合は、北朝鮮脱出から韓国入りまで、わずか8日しかかからなかったという。これは、5000人を上回る韓国内の脱北者の中では、最短の記録。当局者すら「超特急の北朝鮮脱出」に驚き、いかにして可能だったかについて綿密に調べているものとされる。

ある当局者は「最近に入り、一部脱北者の韓国行きの過程は、あたかも『海外リュックサック旅行』を見ているようだ」と話したりもした。実際、統計上でも韓国行き「北朝鮮脱出列車」のスピードは次第にアップされつつある。昨年上半期に韓国入りした脱北者503人のうち中国での滞在期間が1年未満の人は全体の12.1%(61人)。

しかし、今年上半期に入国した760人のうち、中国滞在期間が1年未満の人は38%で、大きな増加ぶりを見せている。今年4月には、脱出から6ヵ月後に韓国入りを果たした人の割合が32%にのぼった。5月の入国者80人の中の同割合は25%(20人)で、依然として高い。先月、韓国入りした6人のなかには、わずか1ヵ月後に「超特急」で入国した人が6人もいる。

▲定着は緩行〓北朝鮮の有名大学の化学科を卒業し、専門職の公務員を務めていたチョンさん(女・30)は、今年3月、韓国入りし、専攻を生かせる職業を探したが、結局失敗した。現在、ソウル東大門(トンデムン)の韓国食堂で食べ物を運んでいるチョン氏は、うつ症の症状を見せている。98年に入国した李さん(38)は、浄水器販売会社の営業職員として勤務し、韓国社会に適応しつつある。

しかし、偶然付き合うようになった女性と結婚するため、女性の父親に会ったが、冷たく断られた。「自分一人生き残るため(家族を捨てて)渡ってきた人に娘を渡せない」との話だった。夢見ていた韓国に来た脱北者は、経済的な面のほかにも、社会的な異質感と距離感を依然として狭められず、悩んでいる。

脱北者552人の意識を調べた延世(ヨンセ)大医大の全宇鐸(チョン・ウテック)教授は「脱北者は初めて入国する当時は、自信に満ちていて、たとえ良い生活ができなくても幸福だろうと思っている」とし「しかし、時間が経つにつれ成功の可能性が薄れて悲観的になり、無視と差別で深刻に悩んでいる」と話した。全教授は「入国時点から時間がたくさん経っているほど、自分のアイデンティティーについても悩むケースが多くなる」と付け加えた。

社会定着のための一次的な責任を持っている脱北者らにも問題はある。昨年、統一研究院が脱北者780人を対象に調べたところによると、かれらの就職率は39.85%、月平均所得は74万ウォンだった。しかし、ある脱北者は「調査結果は実際の状況と異なる」とし「相当数の脱北者が、政府支援金を受けるため、就職できなかった、と回答している」と指摘した。

実際、一部脱北者は「韓国の人々が忌避する3K職業を、なぜ私達がしなければならないのか」と問い返す場合もあるという。40代の脱北者、Kさんは、昨年「韓国人と全く同じ仕事をしたのに、なぜ月給を80万ウォンしかくれないのか」と抗議し、ソウル永登浦(ヨンドゥンポ)市場の仕事(卸売商の配達)を辞めたりもした。

▲統合へ進む道〓問題は、北朝鮮脱出の動機と脱北者の構成が変わりつつあるということだ。関東(クァンドン)大の李ウォンウン教授(北朝鮮学科)は「脱北者の構成と北朝鮮脱出の動機が以前とは異なる。『移住民』の概念に変わっている」と指摘した。体制への不満のため韓国行きを選んだ「亡命」や、経済的な困難のための「生計型脱北」が終わり、いまでは、さらに良い暮らしを求めて韓国に向かう「大規模な移住」の時代が到来したというのだ。

したがって、脱北者も基本的な生計に満足せず、それ以上を期待している。慶南(キョンナム)大のユン・ヨサン教授は「かれらの成功的な定着のためには、政府レベルの支援政策では限界がある」とし「社会全体が脱北者を受け入れられる体制に変わらなければならない」と話した。

「韓国内の脱北者が2万人を超えると、政府はもはや手に負えなくなる」

2回にわたり、脱北者468人が一挙に韓国入りする前日の26日、国内の情報機関のある関係者は堰が切れたように殺到する脱北者の入国の行列にこのような分析を出した。

今回の脱北者の大量入国が北朝鮮住民の脱出に拍車をかけるものと言い切るにはまだ早い。ところが、すでに北朝鮮を脱出し、中国に滞在している脱北者10万人あまりが第3国を経由した韓国入りをより積極的に「考慮」するように働くものとみられる。果たして、同関係者が提起した「仮説」は、現実のものになるだろうか。

▲姿を消した脱北者たち〓3、4年前まで北朝鮮の国境で自動車でわずか2時間の距離である中国の延吉市中心の延吉協会の前には、助けを求める脱北者たちをすぐ見かけることができた。市場の路地には、金を乞い、他人の物を盗む脱北「コッチェビ(流れ者)」があふれ出ていた。

しかし、04年現在ここで粗末な身なりの脱北者たちや「コッチェビ」たちは、完全に消え去った。北朝鮮の茂山(ムサン)と隣り合わせている中国の町に住む朝鮮族のシン氏(36)は「数年前までも、冬に川を渡ってきて、数日も泊まっていく脱北者たちが20人あまりにもなったが、最近は密輸者たちが行き来しているだけで、脱北者たちはほとんど来ていない」と述べた。

脱北者たちがもっとも多く利用する豆滿江(トゥマンガン)を渡る「脱北」の勢いは、一応02年末を持って小康状態に入ったとされる。

一部の脱北支援の民間団体は、現在までの脱北者数を最大20万〜30万人と主張する。しかし、国連難民高等弁務官室は昨年その数を10万人あまりと推算した。その多くの脱北者たちは、今どこにいるのだろうか。

このうち、一部は中国で公安に逮捕されて北朝鮮に移送された。今年5月米国の難民委員会(USCR)は、昨年中国で逮捕されて送還された脱北者数が7800人あまりだと集計した。

北朝鮮の咸鏡北道・清津(ハムギョンブクド・チョンジン)に住んでいて最近韓国入りした脱北者のチョン氏は「うちの人民班(インミンバン・30〜50戸)だけで中国で捕まえられて送還され、職場に出勤させられる人が3人もいた」と証言した。

▲彼らはどこへ向かうのか〓問題は中国に隠れている脱北者たちの今後の行方。かれらのうち、韓国行きを選択したのは10%だけで、1万〜2万人に上る。

大部分の脱北者はすでに北朝鮮—中国の国境地域を離れ、どこかへ消え去った。6年間脱北者たちを保護してきたウォン氏(42・延吉市居住)は「従来の脱北者たちは、すでに大部分中国の内陸へ移動して定着していた」と述べた。

かれらが韓国行きを選択するかどうかが今後国内の脱北者の数字を左右するだろうとみられる。最近になって、北朝鮮からの更なる脱出は、ほとんど見当たらないものと言われている体。

昨年8月韓国入りした脱北者のチェ氏(38)は「中国で5年間暮らし、言葉を身につけて適応した。似たような境遇の脱北者5人と一緒に広州で仕事を持って生活した」と述べた。

広州は、北朝鮮—中国の国境から数千kmも離れている。

チェ氏は「中国ではいつ逮捕されるかいつも不安な思いをしている。韓国に行けば、よりよい生活ができるという一心から、ブローカーに金を手渡して韓国行きを選んだ」と述べた。チェ氏のように、中国や韓国に当てもない脱北者たちは、おおむね韓国行きを念頭においている。

拉致脱北人権連帯のト・ヒユン事務総長は「いったん、中国に定着した脱北者たちは命がけで第3国の国境を通過すると、すぐ韓国入りするわけではない。ところが、費用と情報、安全さえ確保されれば、大挙韓国入りを選ぶ可能性もある」と説明した。

とくに、中国が脱北者の逮捕と送還に本腰を入れれば、脱北者たちの韓国行きに弾みがつきかねない。「当てもない脱北者」の韓国入りが相次いでいることから、皮肉にも彼らが新たな脱北者たちのあてになるなど、国内の脱北者数は雪だるま式に増加する可能性がある。



黃有成 yshwang@donga.com zsh75@donga.com