Go to contents

聴診器をおろして…患者の話に耳を傾けて

聴診器をおろして…患者の話に耳を傾けて

Posted October. 27, 2007 03:08,   

한국어

04年まで15年間、米国人アン・ドジ氏は30人あまりの医者に会った。30代女性のドジ氏は、食べ物を口にするたびひどい吐き気と痛みをもよおす症状があった。ある医師は過食症と拒食症をともなう食餌障害だと言った。内分泌学、血液学、伝染病学、精神医学の医師などあらゆる医師に会った。にもかかわらず、症状は日増しに悪化するばかりだった。

医師たちは、シリアルのように消化のよいでん粉を中心に、1日最小3000カロリー摂らなければならないと言った。でも、その後も吐き気と嘔吐が続いた。ある医師は過敏性大腸症候群だと診断した。ドジ氏は無理に3000カロリーを食べていると言ったが、医師たちは体重が減り続けるのをみて、彼女が嘘をついているのだと思った。

04年、ドジ氏は、米ボストン・ベス・イスラエル・デカニス・メディカルセンターのマイラン・パルチョク博士に会った。当初、これといった期待はしてなかった。他の医師たちのように、それまでの診療記録を見て似たりよったりの治療法を言うに違いないと思った。ところが、パルチョク博士は違った。彼は診療記録をまったく見ていないように質問をし、聞き、観察した。患者の話に耳を傾けた。

パルチョク博士は、ドジ氏が実際に3000カロリーを摂っているという結論を下した。綿密な検査の結果、彼女が免疫障害である小児脂肪変症(穀物の主要成分にアレルギー反応を示す病気)を病んでいるという事実がわかった。穀物に拒否反応を示す患者に、以前会った医師たちは穀物を摂るよう処方したのだ。ハーバード大医学部教授の著者は言う。患者の話に背を向けた瞬間、わたしたちは真の医師ではなくなる、と。

本書は、患者を治療するさい、医師の頭の中でどんなことが起こり、どんな思考過程を経るのか、また、経なければならないのかを教えてくれる。著者は血液疾患、がん、エイズ治療で著名な医師だ。

パルチョク博士は他の医師たちと回診中に、医師たちが患者の問題を深く考えないことに失望した。教える自分にも失望した。北米全域の名医をたずね、彼らが患者を診る時、どんなことを考えるのか、どんな思考の過程で患者の病を正確に見つけ、どんな間違った思考のために誤診のミスをおかしたのか、率直な話を聞いた。本書は、患者との対話が医師の思考と決定にとって非常に重要だと主張する。特に、固定観念を捨てることが最も重要だ。ポジティブな先入観も危険だ。

カナダ・ハリファクス応急室のパック・クロスケリー博士が打ち明けた。ひきしまった体と健康を誇る山林監視員が胸の痛みで病院にきた。検査の結果、これといって異常なところはないと判断した。翌日、その患者が心筋こうそくで再び病院に運ばれてきたと聞いて、クロスケリー博士は深く後悔した。博士は患者から、狭心症の兆しを感じたが、患者があまりにも元気そうだったので、他の可能性を考慮できなかったのだ。

否定的な先入観も危険だ。カナダ・トロント大のドナルド・レデルマイヤ博士は、インターンから、一人暮らしの70代の老人について報告を受けた。みすぼらしい身なりに酒の匂い、毎晩、ラムを一杯ずつ飲むと話す老人からくみとれるひとつの可能性は、アルコール性肝硬変だった。

このような患者を診た時、どんな感情を持つか、博士は率直に言う、「嫌悪だ」と。インターンは早とちりをしていた。博士は偏見を捨ててさまざまな検査を行った。肺と肝臓の疾患を誘発する珍しい遺伝疾患が発見された。その上、患者はアルコール中毒者ではなかった。

このように本書では、有名な医師たちが誤診の経験さえ率直に打ち明ける。患者との出会いから診断を下すまで、医師たちから直接話を聞いているかのようにリアルだ。

医師のための本のようだが、実は、患者や患者の家族など、病院に行かなければならない人たちのための本だ。病院を訪ね、誠意のなさや、とんでもない診断をする医師に、疑心暗鬼になったことがあるはずだ。著者は、患者と患者の家族が医師に正確な情報を与え、積極的に対話を求める時、それが医師の思考を助けると言う。原題「How Doctors Think」(07年)。



zeitung@donga.com