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ガムのような関係…吐き出してもつばが溜まる

ガムのような関係…吐き出してもつばが溜まる

Posted October. 06, 2007 05:39,   

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見知らぬ人と知り合う時、私たちの本来の自分より、少し大げさに振舞う。手振りや笑いが共に大きくなる。05年に発表した『走れ、アビ』の時の金エラン(27)氏も同様だったという。

初の小説集『走れ、アビ』で文壇を騒がした金エラン氏。「不思議にうまく書いた」小説を発表し、読者たちをびっくりさせてから2年ぶりに、同氏は「2回目の小説」を出した。季節ごとに頼まれた8本の短編をまとめたもので、文壇では最年少層のこの1980年代生まれの作家が、これまでどれだけ多くの関心を集めたかを推し量ることができる。

その間、多くの変化があった。明朗漫画のような顔や、カメラの前でよく似合う面白い表情を見せたこの作家は、少女漫画の主人公のように柔らかで注意深くなった。パンキースタイルの髪型も落ち着いた短髪に変わった。しかし、何よりも変わったのは、彼女の小説だ。よくできたユーモアが強烈だった初の小説集とは違って、『つばが溜まる』は「質素になった」。

でも、それは足りないという意味ではない。作家の声は落ち着いてはいるものの、だからこそ一層柔らかく聞こえる。彼女の目線は低くなったが、だからこそ、余計に暖かい。「読者や小説について分かり、時間が経つほど淡々としていられて楽な気持ちだ」という作家の言葉が思い浮かぶ部分だ。

貧しい暮らしに似合わず、ピアノの稽古をさせた母親。しかし、いきなり借金だらけとなり、引越ししなければならない。短編、『気位の高い生活』の背景は、ピアノが無用の長物となった建物の半地下だ。

『クリスマス特選』の恋人は、クリスマスの夜を過ごしたくても金がなく、移住労働者たちでにぎわうの宿屋に入る。このそれぞれの物語が展開される空間は、きわめてみすぼらしいが、作家は、薄汚い背景を現実味を帯びて描写しながらも、その中の人々の心の絵柄を汚くなく、淡白で落ち着いた文体で描写し、行き過ぎた同情を誘わず、「ただ、私たちの同じ土地に住む一人」として理解することができる。

表題作、『つばが溜まる』の主人公である「彼女」は、一晩泊めてほしいとたずねてきた後輩と、ひょんなことから一緒に暮らすことになる。母親が市立図書館で、幼い後輩にガムを手渡して離れたという物語を、後輩と暮らすようになった最初の夜に聞かされるのは、気に入らない思い出だ。その上、そのとき残ったガムのひとつだとして、後輩はガムを半分ちぎって手渡し、彼女をさらに苛立たせる。

「その日以来、深く愛した人たちと別れるときはね」。ガムを突きつけられた彼女が力なく答える。「うん」。「分かれて、また分かれて、この上なく心を悲しませた残酷な時間を思い出すときはね」。「うん」。後輩は限りなく透明な表情で語る。「今も口の中につばが溜まるのよ」。

自分の好みや外観、習慣まで似てくる後輩が次第に負担となった彼女は、ある日、後輩を自宅から追い出す。

もちろん、この物語は関係に関したものだ。関係を切に願う後輩と、後輩を理解できない彼女を、金氏は低い声で細かく描写する。あなたが耐えられない相手の傷跡を、ただ認めてほしい、理解することだけで十分だと、作家は切に訴える。小説集のタイトルを、『つばが溜まる』とつけた理由も分かるような気がする。

『つばが溜まる』は、冷静な最近の本のタイトルとは違ってべたべたするが、それは作家が読者に直接、話しかける言葉だから意味がある。「本を読むあなたと別れようとする時、私(作家)はつばが溜まる」と。



kimjy@donga.com