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ホコリ…取るに足りないなんて、とんでもない

ホコリ…取るに足りないなんて、とんでもない

Posted September. 15, 2007 05:07,   

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宇宙の岩石や木の皮、アリの足、恐竜の骨、タイヤのゴムのかけら、花粉、バクテリアの共通点は?それはホコリかもしれない。

あまりにも小さすぎて取るに足りないもの、ふき取らなければならないホコリ…。さまざまな呼吸器疾患を引き起こす粒子状の物質を除けば、ありふれるホコリについて、真剣に語る人はほとんどいないだろう。

この本では、意を決してホコリに関するすべてのことについて説明する。分野を問えば硬くなりがちな自然科学の本だが、著者の機転のきいた易しい説明のおかげで、すらすら読める。よくできた1本のドキュメンタリーを見たような気がする。

著者は、ニューヨークタイムズなどにコラムを書く科学自然史の専門作家だ。専攻ではないが、理論や書き物の才能を兼ね備えた大衆化学の著述家の存在がうらやましい。

事実ホコリは、気候学や免疫学など、科学者たちの主な研究対象となっている。ホコリは大気へ飛んでいき、全世界に広がる。ホコリの旅のおかげで、ロッキー山脈にまで行かなくても、ロッキー山脈が侵食中であることが分かる。フィリピンに行かなくても、フィリピンで火山が爆発していることが分かる。何気なくふき取ったホコリには、実は天気や気候はもとより、大地や海、ひいてはわれわれの胸の中の深いところまで変える膨大な力が潜んでいると、著者は主張する。

自然が作り出したホコリは、「大きなホコリだ」。花粉は鼻の中にこびりつくほど大きい。「自然のホコリ」は10ミクロン(1センチ=1万ミクロン)より大きい。問題は、これより小さい「危険なホコリ」だ。水銀や鉛、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニル、放射能などのホコリだ。人が作ったホコリはブーメランのように、私たちの体の中に張り巡らされているわなをくぐって、肺の深いところまで浸透して病気を起こす。

しかし、空気なしでは生きていけないように、ホコリなくしても生きていけない。著者はきれいすぎる世界は、行き詰まり、蒸し暑いだろうと話す。その説明を聞いてみよう。水蒸気が凝結するためには、ホコリが十分でなければならない。水蒸気はホコリの小さな表面の上に集まる。ホコリがなければ、相対湿度が300%ぐらいに上がるまで、水蒸気は凝結しない。空には雲がなくなり、地球はものすごい猛暑に襲われるだろう。

この本のもっとも大きなメリットは、読者たちが理解しやすいように、親しみのある例をいっぱい挙げているということ。機転に富んだ説明のため、難しい科学的な説明にも退屈しない。例えばこうだ。

「毎年10億トンから30億トンに上る砂漠のホコリが空へと舞い上がる。10億トンとは、1400万台の貨物車両のつないだ汽車にぎっしり詰めるぐらいの量だ。汽車は地球の周りを6回も巻ける長さだ」。「夏場、海辺で素足で歩いたみたことがあるだろうか。砂が大気よりさらに暑い。(同じように)大気中に浮いている暑い砂やほこりの粒子は、大気や人に熱を発散するラジエーターだ。砂埃の嵐は、地球上のすべての生命体を脱水状態に陥れるほど残忍だ」。

ホコリの力を示す事例も面白いのが多い。モンゴル高原中部のゴビ砂漠で、恐竜「オビラプター」の化石が見つかった。巣を離れず、うずくまっている完璧な化石だ。著者はこのように切り出す。「卵の巣から離れられないように、恐竜をあれほど早く、深く埋めたものの正体は果たしてなんだろうか?それは、遠い昔に起きた迷宮の殺人事件だ。容疑者としてはホコリを取り上げることができる」。

その後の過程を要約すれば、「遠い昔、ゴビ砂漠にも湿気があったが、地殻変動により湿気が消えた。砂漠ができ、ホコリもできた。ホコリの嵐に恐竜が埋められた」ということだろう。著者の説明は興味津々で、まるでSF小説を読んでいるようだ。例の感性高い表現で、恐竜の前に迫った危機を説明する。オビラプターが卵の巣で、空想に浸っている間、空気中の塩の結晶が石灰石の砂利の上に降った。風はなぎ、ホコリはオビラプターの頭上の虚空を高く飛びまわった。

毎年、春ともなれば、私たちを苦しませる黄砂は、分別なく行われる開発のせいだという科学的な説明に加える著者の話を聞けば、黄砂への考え方も変わる。「モンゴルの牧夫が使った華やかな色のシルク帽子、死んだ野性たまねぎの薄い皮、焚き火をたてた後に残る灰、馬の骨、ひいては大陸を支配下においたチンギス・ハンの体の一部が含まれることもありうる」。

この本によれば、過去も未来もすべてホコリの中にある。比喩するなら、ホコリは時間なのだ。われわれが死んで残すホコリも、同じく国境を越え、大気の中でさまようだろう。著者は、「土に帰り、結局、数百年、あるいは数百万年に渡っての侵食作用が起こり、私たちの体は粉々に散ることになる」と話した。数百年前の先祖の散った体が、私のすぐ傍に漂っているかもしれない。ホコリの前で、一層粛然となる。原題「The secret life of dust」(2001年)。



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