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純文学に溶け込むジャンル小説

Posted August. 24, 2007 07:29,   

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9月に出版される金ヨンス(37)氏の長編「すべてであり同時にひとつである」は、ドイツに行った大学生が会うことを約束していた人を探し回るというストーリ[。主人公の大学生とそのガールフレンド、主人公の祖父と、約束した男等、登場人物の個人史がからみあいつつ展開する。疑問を絶妙に解いていく推理手法を用いた小説だ。

金氏は「緊張感をゆるめず、次の章が気になるようにする叙事の戦略面で、推理小説の形式はもってこいだと思った」と話す。

推理小説、SF、ファンタジー、チックリット(Chick Lit=現代社会に生きる若い女性の自分探しをコミカルに、またはシニカルに描く小説)、ホラー小説…。いわゆる「ジャンル文学」と呼ばれる小説だ。

「興味本位の大衆小説」と決め付けられ、「非主流」と位置づけられていたジャンル文学が、最近純文学と混ざりあっている。若手の作家たちが、ジャンル文学の特性を作品の中に取りこんでいるということだ。

まず、SFおよびファンタジーとの融合が目立つ。朴ミンギュ(39)氏は、西暦2487年の地球を背景とした最近の短編「キプ」を含め、長編「ピンポン」、小説集「カステラ」で地球の外に広がっていく想像力の翼を見せる。

ユン・イヒョン(32)氏は、短編「子供のクラス」でサイボーグを登場させており、金ジュンヒョク(36)氏は小説集「ペンギンニュース」で「(音楽の)ビット解放運動」が展開されるファンタジー空間を披露した。

すべてSF小説の十八番となる手法だ。さらに、5月に創刊されたジュンル文学専門月刊誌「ファンタスティック」では、卜鉅一(ポク・ゴイル)、朴玟奎(パク・ミンギュ)、朴ヒョンソ氏など、純文学作家たちが書いたSFやファンタジー小説的な特性の濃い作品を載せている。ジャンル文学を見くびっていた韓国文壇の風土からすれば、大きな変化だ。

また、今年「今日の作家賞」受賞作である李ホン氏の「ギャルフランズ」は、「韓国型チックリット」と呼ばれる。「チックリット」を「若い女性たちが気軽に楽しく読む小説」くらいにしか評価していない批評界の雰囲気を考えれば、作品の受賞決定は驚くべきことだ。

先月出版されたピョン・へヨン(35)氏の小説集「飼育場の方に」はホラー小説に似ている。穏やかな生活を夢見て引っ越した田園住宅の周辺で、犬の声におののく表題作は、「なじみのあること(日常)がなじみのないこと(悪夢)に突然変わったときに発生する恐怖を与える」と評論家の申永𨩱(シン・ヨンチョル)氏は評価する。

これは「慣れ親しんだ物や人がいきなり見慣れぬものに見えたときの、ものすごい恐怖」を描くホラー小説作家スティーブン・キングの作品世界に一致する。

このような傾向について、評論家のカン・ユジョン氏は、社会的な争点をめぐる巨大談論のない時代に、作家たちが多様な実験をしているからだと分析する。

カン氏は「ジャンル文学とは、作家が問題を作り出し、直に答えを解きあかしていく形をとるが、2000年代以降共有する社会談論が消え去ったことから、純文学作家たちは小説で解くべき問題を自ら探すようになり、その過程でジュンル文学的形式も自然に適用するようになった」と説明した。

評論家の金ドンシク氏も「政治的抑圧の時代が過ぎたあと、作家たちはアイデンティティーの根拠を国や家族ではなく、『文化』に置き始めた。ジャンル文学は、れっきとした文化の一部であり、2000年代以降純文学の作家たちがこの手の文化的な感受性をもとに小説を書くのは自然な現象だ」と語る。

一方、韓国文壇で長編創作に対する欲求がふくらみ、叙事の密度を高められる多様なジャンル文学的なツールを導入しているものだとみる向きもある。

SF評論家の朴サンジュン氏は「(主流文学が)リズミカルなテンポでスラスラ読めるという大衆小説の叙事的特徴を取り入れようとするものとみられる。活字媒体より映像媒体に慣れた読み手の趣向変化を意識した創作活動」と分析する。



kimjy@donga.com