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「江南溌剌女」の甘くて酸っぱい世渡り

Posted July. 20, 2007 03:12,   

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「あの年の春、私は多くのものを持っていた。比較的温和な中道右派の両親、スーパーシングルサイズの清潔なベッド、半透明で緑色のモトローラのポケベルと4つのハンドバッグ。週末の夕方には証券会社新入社員のボーイフレンドと…デートした」(『三豊百貨店』より)

『三豊(サムプン)百貨店』はチョン・イヒョン(35)さんの自伝小説だ。大学を卒業して「無職」になり国立中央図書館を訪ねた後、三豊百貨店へ向かう女性は作家と大きく変わらない姿であろう。

どこかに籍を置いてきた慣性のために、やや俗物っぽい歯医者とお見合いをしたからといって、大した傷にはならなかっただろう。この小説は、平凡に育ってきた中産階級家庭の長女が、いかにして文章を書きはじめたかを見せてくれる。

多くのものが与えられた平穏な家庭で育った江南(カンナム)の少女がどのようにして、「心の傷から産まれてくる」といわれる文学の道を選んだのかを。

チョンさんの新しい小説集『きょうの嘘』(文学と知性社)は、「コンプレックスのない世代」(評論家金ビョンイク)の「つづり方」がどんなものかを見せてくれる。その世代は、「ポケベルから携帯電話へ、アイ・ラブ・スクール(インターネットに設けられた小学校同窓と再会するためのコミュニティーで、一時大ブームとなった)から、ミニホームページ(韓国最大のソーシャルネットワーキングサービス)へと、オモチャを変え」(『三豊百貨店』)て、「スターバックスのアイス・モカを飲み、韓国産のビールより2000ウォンがさらに高いベルギー産のヒューガルデンを注文する」(『きょうの嘘』)若者たちだ。

作家が描く人生は確かに、先輩の作家たちが背負っていた戦争の恐怖や体制に対する抵抗とは区別される。「異なる人生」を見せてくれることだけでも、同氏の小説はこれまでの韓国文学とは一線を画す。

最初の小説集『ロマンチックな愛と社会』で常識的にはよくないとされる偽悪を通じて、既成文学では見慣れない(しかしながら現実にあまりにも似ている)女性像を描き抜いたチョン・イヒョンさん。短編10編を括った『きょうの嘘』は、依然として溌剌でおもしろくて、その世代の実際の人生に非常に似ているが、もう少し「文学的」だ。

結婚情報会社を通じてお見合いをした女性に無感覚だった男性が「今回は、彼氏と本当にうまく付き合いたがる」前妻を優しく慰め(「他人の孤独」)たり、大学のクラスメートが少女時代以降の記憶を忘れたのを知り、自身だけが再確認できるクラスメートとの記憶を思い出しながら、出会いを続けていく「危険な独身女性」などの小説がそうである。

再び、自伝小説『三豊百貨店』に戻り、同氏が小説を書くようになったのは三豊百貨店崩壊事件の衝撃のためではなく、「大卒失業者」のやるせない気持ちを分かちあったクラスメートがデパートで死んでしまってからだ。何が文章を書かせるのか、という質問に対し、このすべての作品を通したチョンさんの答えは、「関係」だと言えるだろう。



kimjy@donga.com