Go to contents

見えない「黒い手」

Posted June. 09, 2007 08:17,   

한국어

03年、米国議会はリッグス銀行の資金洗浄疑惑の調査に着手した。1836年に設立されたリッグス銀行は、米国大統領17人が顧客であるワシントンの由緒ある銀行だ。調査の結果は、米国人たちを唖然とさせた。不正腐敗に関与した政治家の資金洗浄をしていたのだ。チリの独裁者ピノチェトの場合、不正に築いた数億ドルの財産を28の口座で管理していたが、顧客情報欄には、「専門領域で大成功し、引退に備えて生涯正当な方法で財産を築いた、引退した専門家」と書かれてあった。

『資本主義のアキレス腱』は、資本主義の陰で起こるあらゆる不法で「汚い」取り引きを分析し、告発する。著者レイモンド・ベーカーは、世界約60ヵ国で約40年間事業を行い、ブルッキングス研究所の研究員に変身した経済専門家だ。数十年間、国際ビジネス分野で積んだ経験をもとに、世界各国で隠れた資本主義の恥部を果敢に暴き出した。

著者によると、最も效率的なシステムと見える現在の資本主義は、3つの「アキレス腱」を持っている。それは、不法資金、貧困、歪んだ哲学だ。

偽造取引、ペーパーカンパニー、脱税などで生じる不法資金は、全世界で取り引きされる資本の半分に近いほど深刻な水準だ。著者によると、横領、詐欺、会計不正、実績操作、資産評価切り下げ、背任などは、リッグス銀行だけの問題ではない。シティー・グループ、JPモーガン、バンク・オブ・アメリカなど、有数の財界グループも関わっているというのだ。特に、後進国で独裁者と資本家が不正に蓄積した財産が海外に流れ込み、第3世界の飢餓と貧困を深めていると著者は指摘する。問題は、これを承知している米国を含む西側先進国が、これに対して制裁を加えないことだ。不正をした政治家や企業家の「黒い」利益は、欧米金融圏に利益をもたらすためだ。

しかし、著者は資本主義に反対するのではない。原則と公正性に欠けた資本主義が、二極化やテロ、反グローバル化の動きを呼ぶため、資本主義の刷新が必要だと主張する。著者は、資本主義に道徳的品性を接合しようとしたアダム・スミス式資本主義に、「多数の幸福のために少数は犠牲になってもいい」と言うベンサムの哲学が割り込み、資本主義が歪曲したと言う。したがって、世界の安全のために、自由放任主義的資本主義を止揚し、米国や西側世界の不法資金への制裁、世界銀行の貧困撲滅のための金融問題介入が必要だと提案する。

原題‘Capitalism`s Achilles Heell’(2005年)。



polaris@donga.com