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新小説集『ピンク・リボンの時代』を発表した作家クォン・ヨソン

新小説集『ピンク・リボンの時代』を発表した作家クォン・ヨソン

Posted March. 09, 2007 05:41,   

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ある運命はアッパー・カットを喰らわせない。軽いジャブを飛ばすだけ。大きく一発喰らえば我に返ったかもしれないのに、運命は親切にといわんばかりに、ポンポンと軽くたたくばかりだ。

クォン・ヨソン(42・写真)氏も同じだった。『青い隙間』で1996年想像文学賞を受賞して、クォン氏は一気に注目される新人となった。「共通教養としての文学」が終わりを告げていた時代、彼女の作品は大学生らが脇に抱えて持ち歩きながら読みふけった小説の一つだった。

それから10年、クォン氏が新小説集『ピンク・リボンの時代』(創作と批評社)を発表するまで、運命は決定的な一発をくれなかった。長編でデビューしたが、短編を書かないと認めてもらえない雰囲気だったので、短編に没頭した。なのに「いじめられるばかりだった」。時間がたち、忘れ去られた。8年が過ぎてからやっと、最初の短編集をまとめた。途絶えていた原稿依頼が一つや二つ入り始めた。「なかなかいい作品」という評判がつづいた。

『ピンク・リボンの時代』は、そのなかなかいい短編7本をまとめたものだ。大学院で勉強しながら不安定に食いつないでいく、ジャブだけ打たれるような日々を送りながらも、小説を書きたいという気持ちだけは一度も忘れることがなかった。「足がついた地で、共に生きている人たちの物語を書こう」と何回も心に決めた。そのような気持ちで書いた作品集で、作者は普段の張り裂けるような日常の不安を、特有の辛らつな文体で描いている。

表題作は大学の先輩夫婦に出会って、中間層の偽善を目にする物語だ。体形を気にするフリをしながらも、肉料理に目がない夫婦。安定した夫婦の営みを送っているフリをしながら、部下の職人と浮気をする先輩…。どうしても口に出すことができず、語り手の胸の中の叫びとして小説は終わる。

外観へのコンプレックスにさいなまれ、彼氏の目の前で母親に怒りをぶちまけるローラ(「秋が来たら」)、老教授の親子の緊張関係に耐え切れず、家出して交通事故に遭うユンさん(「薬豆が煮る間」)など、小説の中の人生は薄氷のように危うい。

「かつては『ひらめき(feel)がなかったら』書けなかったが、いまは少しずつ頭の中で人物を描いていく。やっと作家になりつつあるようだ」。運命に鍛えられたようなクォン氏は控えめに、しかし力強く「これからも末永く小説を書くつもりだ」と話した。



kimjy@donga.com