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幻の特急、世界をすくえ!

Posted November. 11, 2006 04:26,   

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ドイツの著名な作家であるミハエル・エンデの「終わらない物語」のなかで、主人公のバスティアンに、「終わらない物語」をこっそり手渡した人は、古本屋の主人であるカロル・コンラート・コレアンダーだ。現実にはあまりにもみすぼらしい少年であるバスティアンは、偶然、この本を読み、幻の世界を救うために、本の中に入り、胸のわくわくする冒険をすることになる。再び現実に戻ってきたバスティアンは、冒険を通じて得た自信をもって、現実に立ち向かっていく勇気を身につける。

では、バスティアンに「終わらない物語」という本を手渡した古本屋の主人、カロルとはいったいどんな人物だろう。ミハエル・エンデが掘り出した作家であるラルフ・イザウは、彼を「気が小さくて優柔不断な性格の持ち主だった」と伝えている。

本書「秘密の図書館」は、とりもなおさず古本屋の主人であるカロルの冒険物語だ。彼がどうしてタテウル・チルマン・トルツの後をついで古本屋の主人になったかを語る。もちろん、冒険はだれも知らない、古本屋の奥にある「秘密の図書館」で繰り広げられる。分量が600ページ近くになるが、幻の世界は、冒険がいっぱいで、決して退屈しない。

歴史を勉強したが、ややこしい質問をして教授たちから憎まれた末、追い出された24歳の主人公「カロル」。本に取り囲まれて暮らしたいという夢を持って、トルツの古本屋に就職する。しかし、トルツは消えてしまう。彼を探して本屋の奥に入ったカロルは、小人の錐(きり)、アルファ・ベタ・ガンマに出会う。

アルファ・ベタ・ガンマはそこが幻の図書館であり、図書館長のトルツが、カロルを後任館長として考えていたことを知らせてくれる。

幻の図書館は危機にさらされていた。絶え間なく本が消えてしまい、その場には何も残らないという「無」という現象がおきていたからだ。本が消えてしまえば、幻の図書館は崩壊し、結局、幻の世界そのものまで危険にさらされることになる。カロルはこの出来事に身と投じるかどうか迷う。しかし、本屋を経営したいという思いで、トルツを探して幻の世界に入るが…。

なぜ幻の世界を救うヒーローが、現実ではみすぼらしいカロルだったのか。イザウは、彼は想像力に富んでいて、温かい心を持っているからだと説明する。何よりも本が好きだ。本は想像力の宝庫だ。

本書で幻の世界を脅かす「5つの顔を持ったコガム」は、「悪」ではなく、「無」を広めようとする。善と悪は、創造と破壊を繰り返しながら、新たな生命を作っていくが、無は「なにもない」だけで、多様性をみとめない。幻の世界に無がぎっしり詰まれば、その反映の現実も、また索漠たるものにならざるをえない。

つまるところ、本書の「秘密の図書館」は、エンデの「終わらない物語」という本が、古本屋で、どうして、本物の読者であるバスティアンを待つことになったかを物語る。

しかし、エンデの物語は忘れてもよさそうだ。なぜなら、本書はそれなりに、勇敢でもなく、何の迷いもなく強い決定を下すことのできない「たいしたことのない普通の子供たち」を、冒険に満ちた幻の世界に案内してくれるからだ。彼らに、だれにも知られず世界を救う、英雄になれる夢を与えているからだ。



kjk9@donga.com