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あなたは今どこに向かって行っているのか

あなたは今どこに向かって行っているのか

Posted October. 14, 2006 07:01,   

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青いルンダはためく日/私の心もはためくね/空高く鳥は飛び/白い雲は流れるの。//愛する私の女よ/しばらく私を送ってくれよ/やさしいほほ笑みを浮かべながら/私の荷作りを頼む//待つ君がいて/帰って来る私もいる/青いルンダはためく日/風のように帰って来る。(青いルンダ)

ルンダはヒマラヤ地域の少数民族たちが仏経を刻んで木や石にかける旗だ。苦難の巡礼者たちがくたびれ倒れる頃、ルンダに会って仏心を得、気力を回復する神聖な祈祷場所だ。

著者である詩人の金ホンソンさんと夫人のチョン・ミョンギョンさんにとって、ヒマラヤは他ならぬルンダだ。骨の奥深くまで世俗に染まった人間が、救援の道を捜し求めては引き破かれた心身を抱いて訪れる故郷の家であり、母そのものだ。「青いルンダ」は「The water is wide」と言う曲に、金ホンソン詩人が歌詞を付け、夫人のチョンさんが好んで歌った歌だ。

同本は、チォモロンマ(エベレスト山)の南側の岸のクムブ地域と、「白い米飯がお盆にいっぱい積もった様子」を意味するアンナプルナ地域に対する巡礼(トレッキング)の記録だ。

10年あまりの間、ネパール・カトマンズで、「遠足」という韓国料理店を経営しながらヒマラヤを巡礼して来た夫婦は、この本を通じて、人間の始原に対する根源的質問を投げかける。あなたは今、どこに、何に向かって進んでいるのか…。

夫婦の目にはヒマラヤが、「座禅している巨人族の高僧であるように、あるいは三昧に入った神たちの姿であるよう」にうつる。「海抜5000m近くまで行って、数日を過ごしてみると、ふとあの世の敷居を踏んだような感じ」だそうだ。ご飯が美味しく感じられ、花と少女たちが綺麗に見え、憎むべき人間も可哀相に思える。

同本には多くの写真があり、視覚的だ。本の三昧境に入って行ったら、いつのまにか、読者もこれらの巡礼にお供していることを感じる。巡礼者の道にカメラのアングルが付いていくにつれ、読者は詩人夫婦の視線の中にある雪山の荘厳、少しずつ資本の蜃気樓に染めていく少数民族の人々の日常、窮極的なことに対する渇きを共感する。純朴だがお酒の大好きなポーターの話まで…。文には誇張がない。ありのまま、自然と人間に対する暖かい愛情を込め、しかしどうしようもない空と無の虚しさが染み込めてある。

夫人のチョンさんは7月初め、肝臓癌で世を去った。20年前、詩人高銀(コ・ウン)の推薦で登壇した金ホンソン詩人が初めて、詩集『朝顔咲く窓辺で』を出したのは、妻が死ぬ3日前だった。

「彼女はいない。一本の煙に変え、私たちのそばを離れる現場にいたので、私はその事実をよく知っている。どこかで彼女の明るい笑いが、彼女によく似合った青いルンダの歌音が耳鳴りのように聞こえた」(小説家シン・ヨンチョルの推薦の文から)



yyc11@donga.com