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映画『国境の南側』

Posted April. 27, 2006 03:29,   

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ドラマ『バラと豆もやし』などを演出した元プロデューサーのアン・パンソク監督は、初の映画作品である『国境の南側』で、膨れるだけ膨れ上がった自由と欲望の膨張の中で浮遊する現代人に、生きるために祖国と家族を捨てる「特別な人々」を見せることで、享受しているものを振り返らせる人文学的逆説の美学を選んだ。

ストーリーは一見あっさりしている。平壌(ピョンヤン)・萬壽台(マンスデ)芸術団のホルン奏者のソンホ(チャ・スンウォン)と戦争記念館のガイドのヨンファ(チョ・イジン)は、愛し合う仲。しかし、結婚を控え幸せだった若者たちの運命は、韓国の家族との手紙のやりとりがばれたソンホ家族が、北朝鮮を脱出しなければならない状況に追い込まれ、全く違った状況へと進展する。

紆余曲折の末、北朝鮮脱出に成功し、ソウルに居場所を見つけたソンホは、定着金まで詐欺にあう。ヨンファを連れてこようと努力するが、ヨンファが結婚したという知らせに絶望する。愛に傷つき、人生に傷ついたソンホは、情の厚い韓国の女性、ソ・キョンジュ(シム・ヘジン)に心を開き、結婚する。しかしある日、ヨンファがソンホの前に現われる…。

水が流れるように進む滑らかな展開が与える短所ともいえる劇的な事件の不在は、映画中盤部に進むにつれ多少退屈に思われるが、全体的に切ない純愛をうまく描き出した。

まず、鮮やかなリアリティが引き立っている。スクリーンに再現された平壌の町並み、萬壽台芸術団が公演する平壌大劇場、ソンホとヨンファが初めて会う4・15太陽節祭、2人がデートを楽しむ大成山(テソンサン)遊園地、冷麺レストランのオクリュ館などは、私たちに見慣れた無味乾燥な白黒スクリーンの平壌ではなく、私たちと同様、喜怒哀楽を経験する人々が生活する鮮やかな生活空間になった。

さらに、『台風太陽』で次世代の有望株に浮上したヨンファ役を務めたチョ・イジンの自然な表情演技と体に染み込んだ北朝鮮の言葉使いは、時々韓国の言葉使いが混ざったセリフが飛び出し、不安に見えていたチャ・スンウォンの演技を十分にフォローした。初の恋愛映画に挑戦したチャ・スンウォンの演技も成功したようにみえる。

愛するヨンファと再会し、初夜を過ごすが、未明に去った恋人を探し求めるソンホ。その姿に重なる独白は、究極的ににこの映画が向かう地点を象徴する。

「初めて少年団に入団した時は…。その時は、人生というものが、ただ世の中のすべての敵方を勇敢にやっつければいいと思っていた。ためらうことなく前だけを見て進めばいいと思っていた。ところが、今考えてみると…人生とは理解できない音符でいっぱいの楽譜のようで、私がすべきことはただ…手探りで…演奏するだけだった」

映画が提示した国境は分断の障壁だが、障壁は地面上にだけ存在するのではない。私たちの人生とは、考えてみれば、見えない障壁だらけではないか。しかし、人生には越えることのできる障壁も多いが、それを認めなければならない障壁もあるということを、この映画は見せてくれる。



angelhuh@donga.com