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太初に誘惑があった

Posted March. 11, 2006 03:00,   

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細胞はあちらこちらを泳いでいる途中、他の細胞の鞭毛に触れる。同性の場合には「ごめん、間違った」として各自の方向に向かうが、異性に会えば話は全く変わる。お互いに手探りしながら愛撫を始めるのだ。お互いの鞭毛で包みながら核同士で接触できるようにもっと近寄る。そして…。

太初に誘惑があった。すべての生命体の進化過程で目立つ特徴は、まさに彼らがお互いを誘惑するという事実だ。

この本(原題『Une Histoire naturelle de la Seduction』)は、誘惑をフィルターにして進化の歴史を眺める。このようにロマンチックでエロティックに生命体の進化史を見せてくれる本も珍しいだろう。フランスの植物学者であると同時に詩人である著者は、理解しやすいように適切な擬人化を加えて、驚くべき誘惑の世界へ読者を招待する。

生命体が最初に見つけた誘惑の技術は色だった。40億年前に地球の表面に浮かんでいた原子たちが合成する段階で、奇跡的に生命体の根源であり、色の父である葉緑素が誕生した。細胞は分子合成の鎖を修正しながら色に続いて、匂いを作り、フェロモンや動植物性のホルモンの根底になるステロールとカロチノイドが生成される。

著者は、6500万年前の恐竜の絶滅も誘惑の観点で説明する。隕石の衝突で太陽の光を浴びることができなかった植物たちが、カロチノイド色素を作ることができず絶滅しており、まともに食べることができなかった恐竜は体の色を失いかけた。色を失うということは、誘惑能力の喪失、すなわち卵を生むか、子を生産することができないという意味だ。まさにこの点が恐竜の絶滅を早めたというのが著者の説明だ。

植物、昆虫M、魚類、鳥流、哺乳類に遡ると、誘惑の技術は無限になる。

純粋なフランス産の蘭であるオフリスアピペというフェロモンを放出し、雌蜂の尻の形に似ていた花冠で雄蜂を誘惑する。

これは髪の毛に垂直にくっつきお腹を密着させたまま、長い間愛を交わす。ひどい場合は雄が気力が尽きて死ぬこともある。

それだけではない。スズキはオーラルセックスを発明しており、バージニアの雌亀は「1分に6回」も目を瞬きして雄に関心を示す。哺乳類になると、必ず受胎のためではなく、単純に楽しさを享受するために性行為をして相手を誘惑する。

人間は誘惑の超ベテランだが、実際、昆虫や魚類、逝虫類、鳥流などが誇る如何なる飾りも持つことができなかった可哀相な存在だ。美容術と入れ墨などで自然を真似し、複雑な誘惑の技術を作り出すのみだ。

ここで一つ疑問。生命体はどうして性を選んでお互いを絶えず誘惑する、この疲れる行為をするようになったのだろうか。

実は、生命体は単為生殖だけでも十分に再生産ができ、効率性だけを考えれば単為生殖が一枚上だ。それにもかかわらず、生命体の95%は両性生殖を選択する。一体どうしてだろうか。

性が複製の代わりをした理由は、多様性のためだ。性的な結びを通じてお互いの遺伝子が交じって多様な形質が発生し、良い環境の変化にもっとよく適応することができた。著者は「無分別な複製に対する自然のコントロールがなかったなら、青い星の地球はややもすると黄色で巨大な膿のかたまりになった可能性もある」と語る。

著者は、この本のどこにも「生態系と自然の美しさ」について声を高めたりはしていない。その代わりに官能的な誘惑の事例を通じて、遅くても多様性を認めながら特有の寛大さと忍耐心で進化の過程を見守った自然のおかげで、今日の美しい生態系が作られたということを囁くように語っている。原題『Une Histoire naturelle de la Seduction』(2003年)



susanna@donga.com