「ウィ・アー・ザ・チャンピオン〜、マイ フレンズ〜」
２３日午後１０時、ソウル麻浦区東橋洞（マポク、トンギョドン）のある建物。静かな住宅街に英国出身のロックバンド「クイーン」のヒット曲「伝説のチャンピオン」が聞こえてきた。震源地は、建物地下のスタジオ。黄色いジャケットに白いズボンをはきひげを生やした男性が、熱唱していた。容姿だけでなく、歌い方まで「クイーン」のボーカル、フレディー・マーキュリーにそっくりだ。同じ時間、スタジオの一方では、先のとがった靴に保安官のジャケットなど、「ビートルズ」の服装をした男性４人がひそひそと話をしていた。
「おっ、もう１０時だ。そろそろ体もほぐれてきた…。オレたちも練習しよう」
「チケットが６枚売れたって。でも、３枚はオレの知り合いだ…」
本物と言うには少しぎこちない彼ら。顔にしわもあって腹も出たサラリーマンだ。本物より２％足りないが、楽しんでいる彼らはサラリーマン・トリビュート・バンドの「ゼロブイーン・バンド（0vueen band）」と「ザ・アップルズ（The apples）」の二組。
彼らは、２６日から来年５月２７日までの６ヵ月間、月に１、２度の非定期で、ソウル鐘路（チョンロ）のシネコア・チャップリンホールで、合同コンサート「ロック・プライド・ビートルズＶＳクイーン」を開く。４対４で対決する彼らに、ライバル意識や勝敗は関心外だ。ただ「音楽」ができるので、会社帰りが楽しいだけだ。
▲チョン・グァンフン（２９、ゼロブイーン・バンド、電子部品エンジニア）〓「１９９７年にＰＣ通信『ナウヌリ』で『クイーン同好会』を私がつくり、みんなその時に会いました。初めはただの同好会でしたが、ある日本当に『クイーン』のように演奏して歌ってみようと言って、００年にバンドを結成することになったんです」
▲ピョ・ジンイン（３９、ザ・アップルズ、精神科専門医）〓「兄と私、そしてジュンホンの兄と高校の時から『ビートルズ』のマニアだったんです。ある日、兄がフランスの『ビートルズ』トリビュート・バンドの『ゲット・バック・バンド』の公演を見て、『オレたちにもできないことはない』と考え、バンドを結成したんです。その後、兄は脱退し、０２年にインターネットを通じて、他の２人のメンバーを迎えてバンドを作りました」
トリビュート・バンドは、特定バンドを慕う気持ちから作られるバンドだ。音楽を含め、ファッションまで完璧に真似るのが、トリビュート・バンドの目標。専門のミュージシャンではない「ゼロブイーン・バンド」と「ザ・アップルズ」のメンバーたちは、このため徹底した二重生活が必須だ。昼には慎ましい会社員だが、夜には情熱的なミュージシャンに変身しなければならない。
▲アン・チォルミン（３２、ゼロブイーン・バンド、貿易会社勤務）〓「両親に隠れてバンド活動をしています。ある時、ベースギターを持って出かけようとしたら、見つかってえらい目にあいました。今でも両親は、音楽をやめて早く結婚しろと言います」
▲キム・ジュンホン（４４、ザ・アップルズ、建設業）〓「私も、初めは妻に内緒でバンド活動をしました。日曜日にスタジオに行く時は、山へ行くと言ってリュックサックを背負って出かけたものです。今も、高価な楽器を妻に隠れて買います。それでも、小学校３年生の息子が、私よりもジョン・レノンが好きなのを見ると不思議です。息子もバンドをしたいと言ったら、どうしましょう？」
「ゼロブイーン・バンド」は、「クイーン」を韓国式に解釈したもの。彼らは、「クイーン（Ｑｕｅｅｎ）」の「Ｑ」を数字０と「Ｖ」に分けて、「０ｖｕｅｅｎ（ゼロブイーン）」という奇抜な単語を作った。「ザ・アップルズ」は、「ビートルズ」が作ったレコード会社の名前からつけたもの。職場の同僚たちは、彼らを見て「うらやましい」と言うが、その裏にはそれなりの苦労もある。
▲シン・チァンヨプ（３１、ゼロブイーン・バンド、半導体エンジニア）〓「一番大変なことは、メンバーたちと時間合わせることです。仕事が終わって数時間練習したら、肉体的につらい時もあります」
▲チョン・ウチォル（３６、ザ・アップルズ、飲食店マネージャー）〓「音楽とは、正解がないものなのに、私たちは正解のある音楽をしています。まったく同じように演奏できなければ、観客に悪口を言われることも、覚悟しなければなりません」
それでも彼らは、「公演会場の照明がともり、観客の歓声を聞くと、職場でのストレスが吹っ飛ぶ」と話す。
▲チョン・ホンソク（３０、ゼロブイーン・バンド、音響エンジニア）〓「アマチュアのサラリーマン・バンドだけど、本物よりも本物のような『クイーン』を６ヵ月間、お見せしたいです」
「ザ・アップルズ」のメンバーたち、この言葉に対して一言。
「自信過剰じゃないの？『ザ・アップルズ』もファイトだ!」
bsism@donga.com
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