Go to contents

「先生」から「ダーリン」へ

Posted June. 29, 2004 00:00,   

한국어

「誰にも言ってない話だけど…」

尹石花(ユン・ソクファ)氏(48)はこのように言い出した。かえって緊張した記者に尹さんははっきりとした口調で話した。

「30年間止められなかったタバコを、アネト役を演じるために止めることに決心したんです。紆余曲折のすえに、21歳のアネト役を演じることに決まった後、『俳優の変身は無罪』と言っていたけど、内心怖かったんですよ。舞台に立つたその瞬間、俳優は後輩ではなく、まったく同じ同僚であるだけに、若い人たちの体力とダンスに付いていけるだろうかと心配だったんです。それで決心したんです。演劇するとき、私には呼吸同様だったタバコを止めるぐらいの意志があれば、出来ないことはないと」

ミュージカル界の看板スターに「思い切った決心」をさせた作品はミュージカル『土曜日の夜の熱気』。1970年代を風味したグループ「ビージーズ」の歌を素材に青春の彷徨、愛と友情、夢に対する渇望を描いた作品。2003年に尹さんが製作、演出したミュージカルで、今年は出演まで決心してかなり悩んだようだ。

尹さんの相手であるトニー役には朴ゴンヒョン氏(27)が出演する。昨年、尹さんは無名の新人だった朴さんをオーディションを通じて、このミュージカルの主役に抜擢した。周囲は経験不足を理由に反対したが、尹さんは朴さんの可能性を見て押し通した。結局、朴さんは期待を裏切らず、新人として立派に輝いた。昨年「先生と弟子」は、今年急に「愛する恋人」に変わったわけだ。

●アネトとトニー

尹さんの憂慮と違い、実際に練習する姿を見たら、二人はあまりにもよく似合うカップルだった。ぜい肉の全くない「尹石花のアネト」は溌剌として可愛らしかったし、筋肉質の体つきにすらっとした「朴ゴンヒョンのトニー」はむしろお兄さんのように見えた。劇中のアネトはトニーが好きだが、トニーはステパニー(ペ・ヘソン)を愛してアネトを傷つける。

「朴さんは堂々として、無愛想なところが魅力です。たまに私が美容室に行ってきたら、他の後輩たちはあいさつがてら何か言うんですが、朴さんは知らんふり。それで私が『今日、美容院に行ってきたけど』というと、『ああ、見たよ』で終りです」(尹)

年齢だけ見ると、尹さんはトニーのお母さんに近い。実際、朴さんのお母さんは尹さんより1歳年上。何と呼ぶのか気になったので聞いたところ、朴さんは普段は「先生」、お酒を飲むときは「お母さん」「おばさん」「お姉さん」、 練習するときは「オイ、アネト」と呼ぶという。

「出演を決心しながら、この世のおばさんたちに希望を与えよう、代理満足を与えよう、それで演技するときは(48歳だが、21歳の)アネトにぱっと変身しようと思ったんです。そのせいか、トニーがアネトをもっと甘く見ているようです(笑い)」(尹)

●先生と弟子

「去年に続き、今年もイギリスの振付師を招待しましたが、トニーを見てびっくりしたんです。去年は振り付けにそのまま従って踊るだけだったのに、今年はダンスが彼に溶け込んでいると。」

いつの間にか、尹さんはますます発展する弟子を見て喜ぶ。確かに先生に戻っていた。しかし、朴さんは「褒め言葉を聞いたからといって、変わることはない」とし「今度は振付師の前でまたダンスをしながら、去年下手だった自分自身が思い出され、心境が複雑だった」と話した。

「オーディションで初めて見た瞬間、トニーにするかしないかの、いずれかの一つだったんです。年齢よりおっとりして生意気なぐらいクールだったんですよ」(尹)

「去年、漠然とトニーに選ばれればいいなと思っていたんです。ところが舞台に立ってみたら、気持ち良く身の毛がよだつ、その感じがしたんです。毎日出ても毎日震える、そんな新しさです。男女もそんな愛をしたらどんなにいいでしょうか」(朴)

昨年、トニーと一緒に仕事しながら尹さんは「こんな息子が一人いればどんなに心強いだろうか」と思った。そして、息子のスミン(2)が尹さんに来た。尹さんはスミンを「30年間熱心に演劇したことに対して、神様から送られた贈り物」と思う。尹さんの携帯電話には二人の「強く」抱きしめた写真とともに「スミンママ」という言葉が写っている。

「俳優の道がどれほど寂しいかよく分かるので、ゴンヒョンには『君が本当に寂しいときは先生がいることを忘れないで』と言います。誰が何と言っても絶対挫けずにミュージカル俳優としてアイデンティティーを持ってしっかり立たなければならないと」(尹)

「エー、心配しないでくださ。私は一生俳優をするつもりだから、いらいらしません」(朴)

7月17日から8月3日までソウル芸術殿堂のオペラ劇場。

お問い合わせは02—3672—3001。



高美錫 mskoh119@donga.com