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[オピニオン]不安障害を患う鄭亨敦氏

Posted November. 14, 2015 08:03,   

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歌手のバーブラ・ストライサンドについて、「彼女の声は、自然から授かったわが時代の驚異の一つだ」と、ピアニストのグレン・グールドは感嘆した。生まれつきの声帯の持ち主と言われているストライサンドも、30年近く公演舞台に立つことができなかったことがある。1967年のコンサートで歌詞を忘れたことが、その発端となった。大したことではないと見過ごすこともできたはずなのに、不安障害を持っていた彼女には、その軽いミスが舞台恐怖症へとつながった。

◆放送人の鄭亨敦(チョン・ヒョンドン)がすべての活動を中止した。かつてから患ってきた不安障害が最近深刻になり、放送進行に大きな困難を覚えていたという。テレビで、愉快で活気あふれる姿ばかり目にしてきた視聴者らの驚きは大きかった。不安障害とは、大したことでもないのに、神経系が警報装置を作動する精神病の一種だ。極度の不安恐怖症と共に、不眠症や呼吸困難などの進退症状を伴うので、日常生活そのものが難しくなる。芸能人の李敬揆(イ・ギョンギュ)やキム・チャンフンなどが治療を受けたパニック障害や、映画「これよりいいことなどありえない」の男性主人公が患った脅迫障害などがこれに含まれる。

◆会社員からお笑い芸人に転職した鄭亨敦は2009年、「些細なこと一つまでもがあまりにも異なる男女」という心理を扱った「男女探究生活」で、わが時代の平凡な男性像を、100%リアルに演じた。無名の悲しみを乗り越えて、「無限挑戦」などで、スターMCに躍り出た。日差しが強ければ、それだけ日陰も濃いのだろうか。3年前のテレビ番組「ヒーリングキャンプ」で、彼は、「運よく成功したが、自分のぼろが出るのでは、という気がして、過度なほど不安を感じている」と不安障害を打ち明けた。

◆米国成人中18%以上が、不安障害を患っている。韓国でも、患者数が2008年の39万8000人から2013年は52万2000人へと急増した。生憎なことに、来年を予測するトレンド書籍でも、不安が共通テーマとなっている。ジャングルのような世の中で生き残るためには、不安と共に生きていかなければならない。さらに、病的な不安の泥沼に落ちないよう気をつけなければならない。すべてのことを完璧にこなさなければ、という考えから不安が芽生える。完璧主義者だったストライサンドのアドバイスに耳を傾ければと思う。「ありのままの自分を信じること、自分を受け入れることが大事だ」

高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com