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[オピニオン]欲望の三角形

Posted November. 07, 2015 07:31,   

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出版市場では忘れそうになれば、「買い溜め」や「ベストセラーのランキング操作」を巡る議論が浮き彫りになる。便法を使ってでも、ベストセラーのランキングに名を乗せれば、販売実績が上がるという信念のためだ。出版界によると、国内読者の購入欲求を刺激するのは、広告より「ベストセラー」というタイトルだ。最も多く売れた商品がもっと売られる現象を、社会心理学では社会的証拠の法則と呼んでいる。

◆韓国社会はとりわけ、「他人の真似」や片寄現象が深刻だが、他人の趣向や欲望を模倣するのは、現代社会の特徴だ。テレビ広告で、キム・スヒョンが使う電気釜や、チョン・ジヒョンが飲むビールを見せながら、大衆の消費欲望を刺激するのもこのためだ。このような人間欲望の構造を、「欲望の三角形」理論で体系化したフランス思想家は4日、米国で他界したルネ・ジラール(1923〜2015)だった。

◆文学評論家からスタートしたジラールは、哲学や歴史学、人類学、宗教学などに幅広く通ずる業績を残し、「人文学の新しいダーウィン」という評価を受けている。米国で半世紀以上も暮らしてきたのに、2005年、「不滅の40人」と呼ばれ、国民から尊敬を受けるフランスのアカデミーフランセーズの正会員となった。氏は小説の分析を通じて、「我々がほしがるのは、実は他人の欲望を真似した物に過ぎない」という結論を下した。たとえば、「ボバリー夫人」で上流社会に憧れるエマの欲望は、自然発生的なものではない。ただ、思春期の時に読んだ三流小説の主人公の欲望を真似したものだ。

◆親が子供の適性とは関係なく、医師や弁護士になるよう強要するのも、「模倣欲望」から始まったケースが多い。「欲望のトライアングル」が恐ろしい理由は、自分が他人の欲望を真似しながら生きていること自体を自覚していないことだ。ジラールによると、人類は我先に他人の欲望を真似しながら積もっていく妬みや敵愾心などの集団的ストレスを、社会から疎外された人を的外れのいけにえにして解消する。ソーシャルネットワークサービス(SNS)を通じて、他人の欲望を覗くのが日常的なこととなってしまった。流行歌の歌詞に出てくるように、「自分のもののようで、自分のものではない、自分のもののような」欲望に振り回されない練習が必要な時代だ。

高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com