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[オピニオン]安賢洙、ウ・ナリ夫妻の涙

[オピニオン]安賢洙、ウ・ナリ夫妻の涙

Posted May. 13, 2015 07:22,   

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今年3月に他界したリー・クアンユー元シンガポール首相の先祖は、客家人と呼ばれる。客家人とは、後漢以後、北方異民族の侵入を避けて北方の故郷を離れ、南部に移住した漢族のことだ。彼らは、再び中国を離れ、東南アジア、欧州、米国、南米など世界各地に渡った。華僑の先駆者である彼らは、「中華世界のユダヤ人」、「東洋のジプシー」と呼ばれる。

◆「ディアスポラ」は「撒き散らされたもの」という意味がある。パレスチナを離れて他国に定着したユダヤ人を示す言葉だったが、故国を離れる人や集団移住民などの意味で広く使われる。客家人の海外移住を「中国版ディアスポラ」と言う。「コリアンディアスポラ」の概念は19世紀末、国が傾いたためにやむを得ず沿海州に、スターリン治下で強制的に中央アジアに再移住した韓国人まで遡る。

◆11日に放映されたドキュメンタリー「アン・ヒョンス、2つの祖国、1つの愛」は、21世紀のコリアンディアスポラの人生を通じて、視聴者に感動を与えた。国内で全盛期が過ぎた選手と扱われ、2011年にロシアに帰化した安賢洙(アン・ヒョンス)選手と、彼が2014年のソチ五輪で3冠王となる最大の支えとなった妻のウ・ナリ。ワンルームの選手村の宿舎で新婚生活を送る2人の愛が、ネットユーザーの間で話題だ。運動を続けたいという情熱だけで苦難を乗り越え、ロシアのショートトラックの英雄になった夫、狭い化粧台と洗面台で炊事をし、黙々と夫を支える妻、2人は愛の偉大な力を再確認させてくれる。

◆アン選手の移住は、歴史的な痛みから始まった過去のディアスポラとは異なる。ロシアに発つ前日まで、「行かないでいいなら、行きたくない」と言っていた彼を遠い異郷暮らしへと背中を押したのは、八百長と派閥争いで汚れた韓国体育界だった。「自意半、他意半(自分の意志半分、他者の意志半分)」で新しい祖国を見つけ、そこで根を下す間に彼らが流した涙に、今日の韓国社会の歪んだ肖像がある。

高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com



mskoh119@donga.com