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[オピニオン]「殺人犯」の船長

Posted April. 29, 2015 07:22,   

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イタリアのクルーズ客船「コスタ・コンコルディア」号は2012年、ジリオ島周辺で座礁し、乗客32人が死亡した。当時、フランチェスコ・スケッチノ船長は、乗客を捨てたまま脱出して起訴された。イタリア裁判所は今年3月、スケッチノ船長に、懲役16年1ヵ月を言い渡した。外国メディアによると、彼に適用された罪は、殺人(murder)ではなく、故意性の無い過失致死(manslaughter)だ。

◆昨日、旅客船セウォル号の船長だったイ・ジュンソク被告への控訴審で、1審では認められなかった殺人罪が適用された。裁判部は、「イ船長の行為は、高層ビルの火災現場で、責任者が先にヘリに乗って脱出したり、ただ1人の夜間当直医師が、病院から抜け出したのと同様だ」として、イ被告が脱出前に、乗客に退船命令を下さなかったことに、殺人の未必の故意があると受け止めた。1審では遺棄致死傷などの罪で、懲役36年の判決を受けたイ被告の量刑は、無期懲役に引き上げられた。

◆大型惨事とはいえ、殺人罪が適用されたのは異例のことだ。法律家によっては、「1審の判決のほうが正しい」、「控訴審の判決のほうが正しい」と意見が食い違っている。1970年に326人が犠牲となったナムヨン号沈没事故で、船長は殺人罪で起訴されたが、無罪判決を受けた。裁判所は、「船の貨物の過積がひどかったとはいえ、船長自らがその船に乗っているのに、殺人の故意があるとは受け止めがたい」と判断した。しかし、ナムヨン号は当時、3度の波に打たれて、あっという間に船が転覆し、船長が乗客を救助できる時間がなかったものの、セウォル号は、事故後船が80度以上に傾くまで、1時間20分も時間があった。

◆わが国の刑法では、殺人罪は殺人罪一つだけだが、ドイツだけでも、殺人を謀殺(Mord)と故殺(Totschlag)に区別している。謀殺とは計画的殺人であり、故殺は衝動など、別の要因が介入された偶発的殺人を意味する。米国で1級殺人と2級殺人を区別するのと似ている。わが国の刑法体系は、現代社会の大型惨事の予防には適していない。曖昧な未必の故意を乱用するよりは、殺人罪をもっと細かく区分する必要がある。

宋平仁(ソン・ピョンイン)論説委員 pisong@donga.com