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[オピニオン]セシボンとウェディングケーキ

[オピニオン]セシボンとウェディングケーキ

Posted February. 16, 2015 07:22,   

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映画を見て、古いLPアルバムを取り出してターンテーブルにかけた。背面の2番トラック。カートリッジの針がアルバムの溝から青春の感性を引き出す。「もう世も深く静かなのに、窓をたたく音/夜通し眠れず、起きて窓の外を覗いてみたら/人は見えず、寂しく残っているあのウェディングケーキ/誰が残していったのか、私は知っている。悲しい私の恋よ」。40数年前、20代前半だった宋昌植(ソン・チャンシク)と尹亨柱(ユン・ヒョンジュ)のさわやかな声が魂を揺さぶる。尹亨柱は元々優れた美声の持ち主だが、声帯手術を受けて歌い方を変える前の若い宋昌植も、声が本当に情緒的だ。純粋の美学だ。

◆週末に、ツインポリオを扱った映画「セシボン」を見た。涙を流しながら「国際市場」を見た後であり、その時、その時代への郷愁が催された。貧しい時代だったとはいえ、戻ることのできない日々は、懐かしくて残念だ。「国際市場」の胸を打つ感動とは程遠い恋の物語…。でも、映画の中の歌を感傷に浸って聞いていた時の思い出がぼんやりと思い浮かんでくる。

◆映画の最後のシーンにも流れる「ウェディングケーキ」のオリジナル曲は、米女性歌手・コニー・フランシスが歌った同名の曲だ。「…全ての女たちは、ウェディンケーキと共に、数々の喜びや涙が来ることを知っています」。結婚はロマンではなく現実であることを、明るくて軽快なメロディーに盛り込んだオリジナル曲を、作詞家のホン・ヒョンゴルが、悲しくて甘美な歌詞に翻訳した。胸が詰まるよな歌詞が、聞く人たちの感情移入を招く。切ない初恋の思い出が、まるで自分のことでもあるかのように、ないかのように…。

◆二つの映画の主人公の世代は、うんざりするような現実の中でも、経済成長のおかげで未来を夢見ることができた。その時をロマンチックに振り返ることのできる理由だ。しかし、両親の世代とは違って、働き口のために結婚や出産を見合わせなければならない最近の若者たちも、遠い未来、涙ぐみながらこの時代を振り返るだろうか。ひょっとして、現実に苦しみながら、友人のウェディングケーキを見て、うらやましさにため息をついた記憶だけを思いだすのではないか。愛は全ての時代にあるが、希望もあるわけではないから…。貧しい若い恋人たちの未来に、どうか陽光が満ちることを、よりよい世界を切り開いてあげなかった既成世代は祈った。

韓起興(ハン・ギフン)論説委員 eligius@donga.com