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[オピニオン]914メートルの岸壁を素手で登る

[オピニオン]914メートルの岸壁を素手で登る

Posted January. 19, 2015 07:11,   

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映画「ミッションインポッシブル2」の最初のシーン。トム・クルーズが切り立った岸壁をよじ登る。人工的装備に頼らず、岩の隙間を素手でつかんでよじ登るフリークライミングの真髄だ。自然で極限の冒険を満喫するのがロッククライミングの魅力だが、最近は都市でも、人工岸壁で簡単に楽しむことができる。雑念を振り払い、集中力を高め、全身の筋肉をくまなく使うため、頑丈な体を作るのに有効だ。

◆米ヨセミテ国立公園内のエルキャピタン(標高2308メートル)には、専門家らからも難攻不落といわれる垂直の絶壁がある。「夜明けの壁」と呼ばれる巨大な御影石の塊の高さは914メートル。世界最高層ビルのドバイのブルジュ・ハリファより86メートルも高い。不可能と思われていたこの岸壁を、史上初めて素手で登った人たちが話題となっている。米国のトミー・コールドウェル(36)とケビン・ジョージソン(30)、切り立った絶壁にぶら下げられたテントで寝食を共にしながら、19日後に登頂に成功した。

◆コールドウェルは2001年、事故で左手の人差し指をなくした。ロッククライミングのためには致命的な負傷だった。2000年は、キルギスタンに登山に行ったが、アルカイダの人質になるトラウマも経験した。あらゆる試練にも、夜明けの壁を手ぶらで登頂するという目標は揺るがなかった。それに共感したジョージソンが加わり、2010年、初めて挑戦に乗り出したが、悪天候のため途中で諦めた。その翌年、ジョージソンが再び1人で挑戦状をたたきつけたが、足首に怪我を負って退いた。3度目の挑戦の末、今月14日、人間の限界を超える夢を実現した。1970年、エルキャピタンの登頂に初めて成功した登山家のトム・エバンスは、「21世紀初頭、最も重要な登山業績になるだろう」と評した。

◆今回の登頂で最も難しい区間を通る時、ジョージソンは7日間11回も失敗したが、挫折しなかった。頂上に立った彼は語った。「我々の挑戦が、自分だけの夜明けの壁にぶつかっている人たちに、勇気や希望を与えることを願う。遅いかもしれないが地道に努力すれば、誰もが自ら隠していた秘密の壁を征服する瞬間がくるだろう」。到底超えそうもない人生の壁にぶつかった瞬間、覚えておけばいい言葉だ。

高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com