南北が、北朝鮮向けビラを巡って対立している中、不思議な出来事が繰り広げられている。北朝鮮は、ビラ散布を主導する脱北者らを、「人間くず」と規定し、脱北者のうち、主要人物については各個撃破に乗り出している。それに呼応するかのように、国内最大環境団体の環境運動連合は、ビラ散布は、「ゴミの違法投棄だ」と、警察に取締りを要請した。北朝鮮政権と韓国の環境団体が、ビラ散布を食い止めるために、「ごみをめぐり協力」している様子を見せている。
◆北朝鮮は先月２４日、朝鮮中央通信を通じて、いわば「祖国統一研究院白書」を公開した。この白書は、「米国と南朝鮮の傀儡らが、人間くずらを通して、強行するビラ散布は、組織的犯罪であり、故意の戦争挑発行為だ」と主張した。同白書は、ビラ散布や北朝鮮政権への批判の先導に立っている脱北者らの実名を取り上げながら、「祖国に反逆し、逃走した罪でも足りず、反共和国への謀略騒ぎの突撃隊、ラッパ手として乗り出している」と激しく批判した。
◆環境運動連合は、北朝鮮が「人間くず」を巡る攻勢に乗り出してから二日後、警察庁・サイバー苦情室に、バク・サンハク自由北朝鮮運動連合代表などが、「ゴミの違法投棄」をしていると通報した。環境運動連合は、これらの団体が数万枚から数十万枚に上る印刷物やラジオ、紙幣などを空中に散布するのは、自然環境や生活環境を汚染させる行為だと主張した。これに対して、保守団体の国民行動本部は先月３０日、東亜（トンア）日報や朝鮮（チョソン）日報に、「歴史のゴミ箱にぶち込むべき者は君らだ」というタイトルの意見広告を掲載し、「環境運動連合は、環境にかこつけた政治運動集団だ」と叱咤した。
◆バク・サンハク代表は２日現在、警察からなんら連絡を受けていない。氏は、「北朝鮮の核実験や放射能汚染については、一言もできない環境運動連合が、ゴミのことを口にするなんて話にならない」とあきれるばかりだ。あっけにられるのは警察も同じだろう。北朝鮮の住民に正確な実状を知らすことを、ゴミ投棄と同じレベルで扱うなんて、本当にあきれるばかりだ。環境運動連合が繰り広げてきた環境と命の運動がこのような認識に基づいたものだったとでもいうのか。
方炯南（バン・ヒョンナム）論説委員 hnbhang@donga.com
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