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[オピニオン]李文烈の「三星陣地戦」

Posted October. 18, 2014 03:45,   

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04年に放送されたドラマ「バリで起きた出来事」は、財閥2世と貧しい女主人公との愛が招いた悲劇を盛り込んでいる。チョ・インソンやソ・ジソプ、ハ・ジウォンが出演し、高い視聴率を記録した。ドラマの中で、「階級は中世時代にのみあったわけではない」という台詞と共に、イタリア共産党の理論家・アントニオ・グラムシ(1891〜1937)の「獄中ノート」が登場する。作家は、その理由を「不公平な世間に反感をもったキャラクターを描くため」と明らかにした。

◆「我々は、この者の頭脳を、20年間働かないようにさせるべきだ」。ムッソリーニのファシズム政権に抵抗したグラムシの裁判から出た判決だ。しかし、長い獄中生活にも彼の頭脳は止まらなかった。その結実の「獄中ノート」に、機動戦、陣地戦の概念が出ている。1917年、ロシア革命は成功したが、欧米や欧州では、なぜそれができなかったのかを研究した末に出てきた理論だ。帝政ロシアのような立ち遅れた社会では、軍隊や警察を攻撃する機動戦で、体制を一気に転覆させることができるが、自由主義や市民社会が発展した欧米では、同じやり方は通じないという分析だ。その代わりに、文化的へゲモニーを掌握するための長期的戦略、すなわち、「陣地戦」がより適しているという。

◆保守陣営を代表する小説家の李文烈(イ・ムンヨル)氏が最近、三星(サムスン)社長団会議での講演で、グラムシの「陣地論」を取り上げたのが話題となっている。氏は、「三星のような大企業は、国家を構成する基本構造であると同時に、陣地の役割も果たさなければならない」とし、多様な知識人、芸術家階層との積極的なコミュニケーションを強調した。市場経済と自由主義の恩恵者である三星が、産業分野を越えて、文化的ヘゲモニーのために貢献すべきだというアドバイスだ。

◆イ氏は、「我々が目指す自由民主主義を守る複数の陣地は、これまで多く陥落し、廃墟と化した」と語ったことがある。左派陣営が、文化権力の主導権争いで、強固な陣地を固めた結果だ。文壇で、作家が自分の保守的性向を表すことは、大変な覚悟無しには難しいことだ。左右どちらで文化的ヘゲモニーを握っても、独善的な考え方に拘らない社会を作るべきだ。

高美錫(コ・ミソク)論説委員 mskoh119@donga.com