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[オピニオン]崔仁浩の涙

Posted September. 29, 2014 03:21,   

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昨年9月25日に他界した作家の崔仁浩(チェ・インホ)は、生前は永遠な文学青年だった。この世を去る前まで、後輩作家が斬新が文を書けば、きめ細かく読んだ後、訪ねては励ましたりした。後輩らの新しさを「妬む」ことこそ、彼をずっと青年にいさせた原動力だったといわれている。ソウル龍山区漢南洞(ヨンサング・ハンナムドン)のヨベク出版社の中の執筆室に、彼を訪ねてくる後輩作家らにも、いつも優しく接した。

◆数年前、彼が、創作の苦しみを訴える後輩を慰める場面が、改めて思い浮かぶ。「50年近くも小説を書いてきた私も、創作の引き潮の時は、本当に死にたいと思う。そのときは、ペンを置いて、マクシム・ゴーリキーやアントン・チェーホフなどの大作家の珠玉のような短編を、読み返しながら息を整える」。パイプタバコをくわえたまま、真剣な表情で、彼は言葉を続けた。専業作家の際しい道に入ってから何年しか経っていない若い作家が、「青年作家」の崔仁浩の言葉に耳を傾けていた姿が、生々しい。

◆「仁浩がこの世を去った。悪いやつ。遺影の前に線香をあげながら悪口をした。私の胸にあんなに大きな穴を一つ開けておいて行ってしまうなんて…」。(李御寧・元文化部長官)崔仁浩は生前、李御寧元長官とは格別な間柄だった。イ元長官の妻の建国(コングク)大学のカン・インスク名誉教授が館長を務めているソウル鐘路区平倉洞(チョンノグ・ピョンチャンドン)の寧仁(ヨンイン)文学館で、崔仁浩1周期の記念展示会を開いた。「星たちの故郷」、「商道」の肉筆原稿やメモ、切り抜き、映画広告、愛蔵品など、ほぼ全ての資料が11月8日まで公開される。

◆この展示会で、「原稿の上で死にたい」という文章と、両手のひらが刻まれた銅版に、目が止まる。崔仁浩は、がん闘病中も、「このやろうたち、『私は生きている』と毎日叫ぶ」と愉快に話した。生前に書き飛ばす悪筆で有名だったが、愛する妻や子供らに、原稿用紙などに残した短い文章は、きちんと、真心をこめており、一際目立つ。カン館長は、「彼が残した遺品の中で、最も感動を与えるものは、最後の日に、聖母に祈りながら流した涙の跡が、白く滲んだ机や、爪の剥がれた指先にはめていたはずの指差しだ」と話した。この秋、彼が恋しくなる。