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ノアの警告

Posted April. 08, 2014 04:04,   

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ダーレン・アロノフスキー監督の映画「ノア=約束の舟」が、聖書歪曲を巡る議論を招いている。聖書の創世記編をモチーフにしたものの、ほかのストーリーへと変わってしまっているからだ。議論の中心は、ノアが堕落した人間を皆殺しにしようとする創造主の意志を実現するために、箱舟で生まれた自分の双子の孫娘たちまでも殺そうとすることだ。現代的な見方で、映画の中のノアは、神の代理人というよりは、生態根本主義者に見える。

人間だけが優越した高貴な存在だろうか。人間のいない世の中が、もっとよいのではないかという考えは、アロノフスキー監督が最初ではない。米ジャーナリストのアレン・ワイズマンが、世界のいたるところを取材した事実に想像力を加えて書いた本「人類が消えた世界」によると、人間が消えた後、わずか数ヵ月間で、地球の生態系は回復し始める。ワイズマンは、人間の手のつかない自然が、どのような驚異を示すかを、韓半島の非武装地帯(DMZ)が解き明かしていると語る。

人間のいない世界では、大洪水のように、真っ先に水の攻撃が始まる。雨水や地下水が、人間の作ったあらゆる構造物に染みこみ、損傷や腐食を引き起こす。1年が経つと、高圧電線の電流が途切れ、そうすれば、高圧電線にぶつかって、毎年10億匹も犠牲となっている鳥たちの命が助かる。人間が消えれば、真っ先に絶滅する動物は、人間の作った暖かい環境で生息してきたゴキブリだ。20年後は、高架道路を支えていた鋼鉄の柱が腐食して曲がり始め、パナマ運河が詰まり、南北アメリカが一つになる。ダムは崩れ、溢れる水によって都市が浸水してしまう。

アロノフスキーやワイズマンが主張したかったことは、食物連鎖の頂点にいる人間の貪欲への警告だ。人間のいない世界で10万年が過ぎれば、二酸化炭素は人類史前のレベルに下がるだろうが、使用済み核燃料から出てくる放射能が、自然のレベルに下がるためには、さらに100万年が過ぎなければならない。我々が資源をどれほど破壊的に消耗しているのか、現代科学技術の文明がどれほどかろうじて保たれているのかを考えさせられる。

人間が生存するために、資源を消費するのはやむなきことだ。映画の中のトバルカインの「父親と父親たちがやってきた生き方をまねしただけなのに、なぜ我々を見捨てようとするのか」という叫びは、ある程度は説得力を持つ。しかしこれも、生態系が崩れない範囲内でのみ可能なことだ。生態系が崩壊されれば、人間の生存が脅かされざるを得ない。大洪水は、自然の仕返しを象徴する。

現在の生態系の破壊ペースからみれば、「ノアの箱舟」を直ちに作らなければならない。森林破壊や都市化、乱獲、気候変動によって、1970年代から06年にかけて、脊椎動物の31%が減少し、海の魚類は、その半分が枯渇した。国連は、生物種の減少は、自然状態より1000倍以上も早いペースで進んでいると警告している。2万934種の動植物が、世界自然保全連盟(IUCN)の絶命危機のリストの上がり、経済協力開発機構(OECD)は、2050年まで、世界の生物の10%が消えるだろうと見込んでいる。現代版ノアの箱舟は、遺伝資源銀行ぐらい(ということ)になるだろう。

韓国の生物多様性は、熱帯国よりは劣るが、北半球の温帯諸国に比べれば高いほうだ。にもかかわらず、数々の動植物が消えたり、消えつつある。盤龜臺の岩彫り鯨や民画の中の虎は絶滅した。膨大な予算のかかるツキノワグマの復元プロジェクトやイルカ「ジェドリ」の海への回帰は、韓国民が、生物多様性の重要性やその価値を受け入れていることを示している。遺伝資源の活用や利益共有を定めた名古屋議定書の発効に備え、関連制度を見直さなければならない。ノアの警告は我々に向かっている。