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[オピニオン]作家・卜鉅一のがん治療拒否

[オピニオン]作家・卜鉅一のがん治療拒否

Posted March. 28, 2014 04:23,   

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「余命がどれほどあるか分からないが、文を書くことに使いたいと思う。一度入院すれば、再び本を書くことなど難しいだろう。がんの治療を受け始めた作家らは、結局、小説らしい小説を書くことができず…」、「それでもお父さん、ひとまず、生きていなければならないじゃない?だったら、我々はどうすればいいの。お父さんが治療も受けず、ひたすら…」。小説家・卜鉅一(ボク・ゴイル)が最近発売した「呑気な心配事を職業にしている男の一日」(文学の町)に出てくる、父親と娘との悲しい会話だ。

◆この小説に出てくる主人公・ヒョン・イリブは、末期がんの判定を受けた作家だ。フィクションではなく、卜鉅一自分の実際の物語を盛り込んでいる自伝的小説だ。卜氏は2年半前、末期の肝臓がんの診断を受け、病院のドアを出てきた後、一度も病院に通わなかった。抗がん治療を受けなかったのはもちろんのことだ。これまで、計画ばかりしていて、書くことのできなかった小説を、さらに遅れる前に書くためだった。そして、2年半を持ちこたえた。不思議なほどうまく耐えてきた。

◆卜鉅一は、がんの判定を受けた後、さらに一生懸命に文を書いた。1991年に発売した科学小説「歴史の中の旅人」(全3巻)の後続の4〜6巻を、昨年春に脱稿した。20数年前の続編を書くという約束を、病魔と闘いながら守った。さらに、「呑気な心配事〜」や「自分の体の前の暮らし」、「神すら見捨てたこの地で」の小説3冊をさらに書いた。最後だという気がして、普段よりもっと強烈に生きるようになったと、作家は語っている。

◆抗がん治療は、肉体的だけでなく精神まで蝕む。末期の肝臓がん患者の最後の希望といわれている肝移植手術を受けるため、首を長くして待っていて、この世を去る場合もある。卜鉅一が普通の人と同様に、抗がん治療に集中していたなら、今、どんな様子だったか想像してみる。かつては、我々の祖父や祖母らは、自宅で家族全員が見守る中、自然に臨終を迎えた。医学技術が発達した最近は、患者らが顔に人工呼吸器をつけ、腕には注射針をぞろりとつけた状態で、苦痛の中で最後の息を引き取る姿に馴染んでいる。どちらのほうが、人間の尊厳をもっと守る道なのか、卜鉅一の選択に、多くのことを考えさせられる。

崔永海(チェ・ヨンへ)論説委員 yhchoi65@donga.com