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「天皇は神ではなかった」敗残兵が経験した真実

「天皇は神ではなかった」敗残兵が経験した真実

Posted May. 20, 2017 10:53,   

Updated May. 20, 2017 10:53

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「これであなたへの借りは何もありません」

1942年、16歳で日本帝国海軍に志願入隊した渡辺清さんは、4年後にこのような文章で結ぶ手紙を書き、故郷を離れる。長男ではないので引き継ぐものがなく、自ら生きる道を探そうと軍隊を選んだ少年だった。

同書は、「天皇への恩返し」と思って戦った渡辺さんが、敗戦後、天皇に対する虚像から苦しみながら脱する過程を描いた。人間の姿をした神だと信じた天皇が、戦争が終わった後、何の責任も負わないことに渡辺さんは深い裏切りを感じる。天皇を神と崇拝するように教えた学校の教師、戦争時に入隊しろと煽った知識人が、終戦後、いつそんなことがあったのかと言わんばかりに否定する姿に渡辺さんは戸惑う。

著者は、天皇に対して感じる殺意を正直に書き、無責任な天皇を狂信的に信じた自分を反省し始める。日本の経済学者、河上肇の『貧乏物語』と『近世経済思想史論』を読んで、彼が受けた詰め込み式の教育によって自分の中に天皇の虚像が作られたことを知る。平凡な個人が自らの目で世の中を見ることになる過程は、著者本人の肉声で淡々と伝えられる。それゆえ一層感動的だ。

1946年1月、天皇は人間の姿をした神と自任したことはないという「人間宣言」に続き、3月に「天皇は国民を統合する象徴」という憲法草案に直面し、渡辺さんは「服務期間中に受けた金品をお返しする」という内容の手紙を書く。話が始まる1945年9月から翌年4月までのこの記録は、偽りの信仰を強要した国家に捕らわれた過去と戦って勝ち抜いた一人の男の告白であり、その時代に対する証言でもある。



金志映 kimjy@donga.com